ストリートフォトにおける人物のシルエットはとても重要な要素だと思う。
特に現代では人の顔がはっきりと写ったスナップ写真をネット上にアップするのは、あまりよろしくないという風潮。
人をモロに写したスナップ写真はまだまだ多いし、そういう写真がもつパワーも一応理解はできる。中には、「人間の表情とか生々しさを撮らずに何がストリートフォトだ!」と批判する人もいるかもしれない。
でもぼくはそこまで生々しさやドキュメンタリー100%にこだわりはないし、またそうした写真に付随する肖像権問題に真正面から立ち向かうほどの勇気もない。
だからといって、ぼくは人を撮ることをやめるわけではない。
人物をシルエットとして描写する道があるんじゃないか。
最近そう気づいたわけ。
次に考えたのは、
じゃあ、人がシルエットになるときってどういう条件なのか?
ということ。
一番に思いつくのは、太陽の光を背にした人を撮るとシルエットになるということ。
こういうのとか、
こういうの。
日が傾いてきて、逆光になると簡単にシルエット写真になることは経験的に知っていた。しかしこれはあくまでシルエット条件の1つにすぎないってことが最近わかってきた。
一般的には光の明暗差が大きいときにシルエットになりやすいということらしい。
背景は明るく、被写体は暗く
これが基本の条件。それさえわかれば、シルエットは室内でも撮れる。
ここで1つ注意したいのは、シルエットをきれいに見せるための構図。
人物のシルエットが、平面上の明るいエリアにピタッと入るような構図にしよう。
下の写真は失敗作。
人物のシルエットが背景の暗い部分と被ってしまい、きれいに形が出ていない。
さっき、「平面上の」と書いたことに注意してほしい。
人物が明るいエリアに立ったとき・・ではもう遅い。人物が明るいエリアよりも少し手前の暗いエリアに立ち、その背景として明るいエリアがあるからこそ、きれいなシルエットになるのだ。
基本的にシルエット撮影は、カメラを構え、全体の構図を決めてから、人待ちという手順になることが多い。ファインダーや背面液晶を見て、画面上の一番明るい部分に人物がシルエットとしてはまる瞬間にシャッターを切る。
これをぼくは「ダルマの目入れ撮影法」と呼んでいる。
ダルマの目の白い部分に、黒目を筆で書き入れるように人物を配置する感覚だ。
繰り返すが、
被写体(=人物)は暗、背景は明、明暗差でシルエット
これを忘れずに。
太陽光など強い光が直接当たっているときは、被写体はそこまで暗くないが、背景の太陽光が非常に強いので、明暗差が大きくシルエットになる。
そうでない場合は、辺りを見渡し、その場所でひと際明るい場所を探そう。明るさは絶対的ではなく、相対的な明るさでいいわけだから、必ずどこかにそうした場所は存在する。
室内の弱い間接光でも、室内全体が暗ければ、十分条件を満たす。
トンネルの出口付近、建物の影から出たところ、道路や線路の高架など・・・昼間でも暗い場所で、背景となる明るいエリアを見つけるのが簡単だ。
被写体と同じ高さで撮るなら、明るい場所と暗い場所の境界線が狙い目となる。そこには必ず明暗差がある。
商業施設などでは案内板を背景に使うという手もある。
意外にも地面は明るい場所の1つ。太陽からの照り返しがあるからだ。
高い所から見下ろすと建物の影に入った人物はシルエットになりやすい。
このように、どんどん応用問題を解く感覚で、自分なりのシルエット条件を見つけていくのがとても楽しい。
今まで海とか開けた場所でのシルエットしか頭になかったのに、日常の身近なシーンに美しいシルエットが存在するんだという気付き。それがストリートフォトのぼくなりの楽しみ方だ。
まだまだシルエット撮影の経験が浅いので、ここで皆さんにお見せする良い題材が少ない。
あまり説得力がないかもしれないが、少しでも共感してくれる人がいればうれしい。