PassMarkのCPUスコアが2020年の3月から急激に変動したのは新しいベンチマークテスト PT10に変更されたからです
PassMark社の発表によると、
新しいCPUの機能であるアウトオブオーダー実行のサポートを強化しました
アルゴリズムを改良して、より多くのデータをCPUに送り込むようにしたことで、キャッシュとメモリサブシステムの負荷も増加しました。そのため、古いCPUや、キャッシュやメモリの帯域幅が不十分なCPUは、PT10ではあまりうまく動作しないと予想されます
とあります
専門的な話はわかりませんが、全体的な傾向としてスコアが下がっていることは間違いありません
簡単に言うと、
新しいCPUの機能に合わせたベンチマークテストに変更した。
その結果、古いCPUのスコアが下がった
ということだと思います
しかし、例えばノートPC用のIntel第10世代だけで見ても、
末尾「U」のCometLakeはかなり下がった
末尾「G1、G4、G7」のIceLakeも下がったが、CometLakeよりマシ
という傾向があり、その変動理由をすべて説明することは難しいです
とりあえず、ノートPC用としてよく見るCPUをいくつかピックアップして旧スコアと新スコアを比較してみました
旧スコア | 新スコア | 変動率 | |
Core i3-7020U | 3582 | 2603 | -27.33% |
Core i5-7200U | 4603 | 3375 | -26.68% |
Core i7-7500U | 5166 | 3697 | -28.44% |
Core i5-8250U | 7672 | 6145 | -19.90% |
Core i7-8550U | 8262 | 6087 | -26.33% |
Core i3-8145U | 5449 | 3689 | -32.30% |
Core i5-8265U | 7966 | 6292 | -21.01% |
Core i7-8565U | 8750 | 6607 | -24.49% |
Core i3-10110U | 5562 | 4218 | -24.16% |
Core i5-10210U | 8565 | 6527 | -23.79% |
Core i7-10510U | 9540 | 7317 | -23.30% |
Core i3-1005G1 | 6143 | 5201 | -15.33% |
Core i5-1035G1 | 8630 | 7985 | -7.47% |
Core i7-1065G7 | 10488 | 9009 | -14.10% |
Ryzen 5-2500U | 7386 | 6569 | -11.06% |
Ryzen 3-3300U | 5960 | 5727 | -3.91% |
Ryzen 5-3500U | 7688 | 7167 | -6.78% |
Ryzen 7-3700U | 7970 | 7430 | -6.78% |
わかったことをまとめると、
・末尾「U」のスコアは25%前後下がってる
・世代での変動率の差はあまりないように見える
・IceLakeの下落率は12%前後
・Ryzen 3000番台の下落率は6%と低い
となります
◆AMDとIntelの比較
AMD RyzenよりもIntelのCore iシリーズの下落が大きいです
以前のPassMarkはAMDに厳しめのスコアが出る傾向がありましたが、それが新バージョンで補正されたという見方もできます
◆新スコア
下落率ではなく新スコアだけ見てみると、Intelの第10世代では
IceLake > CometLake
という傾向がはっきり出ています
現行モデルの新スコアは
Core i7-1065G7: 9009
Core i5-1035G1: 7985
Ryzen 7-3700U: 7430
Core i7-10510U: 7317
となっています
これがどのくらい信用できるか?と言われると難しいのですが、個人的な印象としてはIceLake(末尾G7、G4、G1)のスコアが良すぎるような気はします
Core i5-1035G1 > Core i7-10510U って本当かな?と思いますね
先日レビューしたPCもCore i5-1035G1を搭載していましたが、スコアは9736とPassMarkが発表している数値よりもさらに良いスコアが出てました。
もう1つ有名なベンチマーク、Cinebench R20のMutiCoreでは
Core i7-1065G7: 1566
Core i5-1035G1: 1210
Ryzen 7-3700U: 1499
Core i7-10510U: 1468
という結果です
IceLakeのCore i7は強いですが、Core i5-1035G1がCore i7-10510Uより上ってことにはなっていないです
CPUスコアはサンプルが増えるにつれ変動するものなので、もしかしたら今後再変動があるかもしれません
いずれにせよ、CPUスコアは参考程度として考え、あまり盲信しすぎないようにしておくべきでしょう
◆Celeron
あともう1つ気になったのはローエンドのCPU
Celeron N4000とN4100も調べてみたのですが、旧スコアよりも新スコアの方が高く出ていました
旧スコア | 新スコア | 変動率 | |
Celeron N4000 | 1422 | 1507 | 5.98% |
Celeron N4100 | 2238 | 2526 | 12.87% |
特にCeleron N4100のスコアが2526と高いのに驚きました
このスコアはCore i3-7020Uと同等です
Celeron N4100は4コア(ベースクロック1.1GHz)
Core i3-7020Uは2コア(ベースクロック2.3GHz)
コア数がCeleronの方が上なので、ベンチマークスコアも出やすくなっているのでしょう
しかしシングルスレッドのスコアでは
Celeron N4100: 1043
Core i3-7020U: 1384
と差があります
このクラスのCPUだと、やる作業も軽めなのでシングルスレッドの性能の方が効いてくるのではないかと思います
なので、Celeron N4100が普段使いでCore i3-7020Uと同レベルで快適か?と言うとそれは違うというのがぼくの考えです
普段使いなら
Core i3 > Celeron
差が出るはずです
旧スコアはそうしたシングルスレッドのスコアも重視していたように感じます
新スコアはマルチスレッドの性能に寄りすぎているので、ローエンドのCPUでスコアを比較するとどうしても体感とは違う結果が出てくる可能性が高いでしょう
Celeronなどローエンドの4コアCPU搭載のノートPCを買う場合にはそうした事情も考慮した方がいいと思います
とりあえずシングルスレッドのスコアもチェックしてあまりに低いやつは避ける。それで失敗は防げるはずです