HPのElite Folioは2021年10月発売の2-in-1。
- ARMプロセッサ(Snapdragon 8cx Gen2)を搭載
- ヴィーガンレザー(合皮)を使用したデザイン
- ペン付き
- 4G/5G対応
- 長時間バッテリー
という特徴があります。
一言で言うと、かなり使う人を選ぶ製品です。
ARMプロセッサは主にスマホに使用されているもので、パソコン用のCPUに比べ
・性能は落ちる
・使えるアプリが限定的
・静か(ファンがない)
・長時間バッテリー
と一長一短あります。
なので感覚的には通常のWindows機よりもChromeBookに近いのかもしれません。
実は筆者もARM版Windowsはこれが初めて。一般的なノートパソコンとは勝手が違うので少し戸惑いました。
気になる性能をチェックしていきましょう。
レビュー機のスペック
・Windows 10 Pro
・CPU:Qualcomm Snapdragon 8cx Gen2
・メモリ:16GB (8GBx2)
・SSD: 512GB
・ディスプレイ:13.5型 (1920×1280) 、光沢、タッチ対応
・グラフィックス: Qualcomm Adreno 690
・USB: USB-C x2
・インターフェイス:ヘッドフォン
・Wi-Fi: Wi-Fi 6対応
・WWAN: 5G対応 (nanoSIM)
・重量: 1.33kg
・ペン: アクティブペン付属
OSはWindows 10 Pro。CPUはARM系プロセッサのSnapdragon 8cx Gen2です。内蔵GPUも同じくARM系のQualcomm Adreno 690となっています。
上記のスペックで19.8万円(税込、送料込)
通常のノートパソコンの相場から言うとちょっと高めです。
※価格は2021年12月時点のものです。最新情報はHPストアで確認してください。
デザイン、ディスプレイ
変形タイプの2-in-1で、ディスプレイが天板から外れて前にせり出してくるという特殊な変形が可能です。
これがディスプレイが前にせり出したきた状態。
「メディアモード」という名前が付いているらしいです。
この状態で映画やドラマを観たりするには良さそうですが、急にキーボードが使いたくなったときにまた変形しないといけないのがネックです。
ディスプレイを反対方向に倒すとよく見る「タブレットモード」になります。
付属のペンはキーボード上部に収納でき、同時に充電が可能です。
マグネットでくっついているので落とす心配もありません。
ボディはヴィーガンレザー(合皮)を使用。
手触りが良く、また高級感があります。
ただ重量は1.33kgと重め。
13.5型ノートで持ち歩き用のPCであれば、1kg前後くらいが欲しいところなのでその理想とは少し開きがあります。
ディスプレイは
・1920×1280
・縦横比は3:2
・光沢
・タッチ対応
という仕様。
通常の16:9や16:10よりも縦に長い(3:2)ディスプレイなので、Webページを表示する際の情報量が多くなるのがメリットです。
光沢タイプなので映り込みはけっこうあります。室内の蛍光灯などが映り込むと目が疲れやすくなるのがマイナス点です。
輝度(明るさ) は300nitとまずまず。明るいリビングで使うとちょっと暗く感じるときがありました。
良い: 高級感がある
良い: 独特の変形モード
良い: 3:2ディスプレイ
微妙: 光沢タイプで映り込みが気になる
悪い: 1.33kgと重い
ベンチマーク
CPUはスマホ用のSnapdragon 8cx Gen2です。
PassMark(ARM用)のベンチマークテストを実施したところ、4165というスコアでした。
通常のCPUと比較してみると、ちょうど第10世代のCore i3程度といったところ。第10世代のCore i5とは差があります。
◆ブラウザベースのベンチマーク
WebXPRTはブラウザーベースのベンチマークです。Webブラウザ上で比較的軽めの作業を行った場合の快適度を数値化しています。
本機のスコアは136でした。
このスコアはCore i3やPentium 6500Yよりも下のスコアでした。
◆軽めのゲーム
グラフィック性能もあまり良くありません。
Microsoftストアでダウンロードした軽めのゲーム「Asphalt 9」をプレイしてみましたが、動作がカクついてほとんどプレイできませんでした。
このゲームはCPU性能の低いSurface Go 3でも快適にプレイできるほど軽いゲームなのですが、それすらまともに動かないのはマイナス点です。
◆Windows 11では64bit版アプリも使用可能に
我々が通常Windows機で使うアプリは64bit版アプリです。
ARM版Windows 10では使えるアプリは32bit(x86)版アプリが主となりますが、Windows 11にアップグレードすれば64bit(x64)版アプリが使用できるようになります。
本機は貸出機のため、Windows 11での検証はできなかったのが残念です。
◆SSD、起動の速さ
CrystalDiskMarkを使用してSSDの速さをチェックしてみました。
シーケンシャルリード、ライトは良好ですが、ランダムリード、ライトは遅く出ています。
参考まで通常のWindows機では以下のような速さになります。
2つを比較すると、レビュー機(1つめ)のSSDは遅いと言わざるを得ません。
実際この差は起動の差に出ます。本機の電源ボタンを押してからデスクトップが表示されるまでにかかった時間は45秒。SSDとは思えない遅さでした。
通常SSD搭載機では12秒前後が平均ですから、その3倍以上かかっていることになります。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
△Web会議
×画像編集(RAW現像)
×動画編集
×ゲーム
×起動の速さ
という目安になります。
微妙: ネットと資料作成までが限界
悪い: 第10世代のCore i3と同等かそれ以下の性能
悪い: グラフィック性能も低い
悪い: 起動が遅すぎる
キーボード
キーピッチは18.4mm、キーストロークは1.3mmです。
キーの配列と打鍵感は良好です。
Enterキーの大きさも良いです。海外メーカーではEnterキーやBackspaceキーが小さいことがよくありますが、本機はそうなっておらず、タイプしやすい形状です。長文に耐えられるキーボードになっていると思いました。
良い: キー配列、打鍵感は良い
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが2つのみとシンプルな構成です。
USB-AがないのでUSBメモリとかを直接挿すことはできません。
USB-CはThunderbolt 4ではないものの、PD(電源供給)、映像出力に対応しています。
良い: USB-C充電可能
微妙: USB-Aポートなし
アクティブペンが付属
ペンが付属なのはうれしい点です。
ペンを使うときは、ディスプレイを前にせり出した状態の「メディアモード」が便利です。
ペンの書き心地も良好です。
バッテリー、排気音、熱など
ARM版CPUを搭載しているのでバッテリーのもちは良いです。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約12時間でした。
厳しめの条件でこの時間なら十分だと思います。
もっと軽めの作業なら18~20時間はもつでしょう。
ThinkPad X13 Gen 2 | 5.5時間 |
HP Elite Dragonfly G2 | 6.0時間 |
Surface Pro 8 | 6.5時間 |
ThinkPad X1 Carbon | 7.0時間 |
VivoBook 13 Slate OLED | 7.0時間 |
HP Elite Folio | 12.0時間 |
通常のWindows機を比較してもその長さが際立ちます。
その他、熱や音に関しては問題ありませんでした。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
バッテリー | ☆☆☆☆☆ |
コスパ | ☆☆ |
短所
・CPU性能は低め(ネットと資料作成まで)
・起動が遅すぎる
・ちょっと重い(1.33kg)
長所
・高級感
・キーボードの配列、打鍵感
・4G/5G対応でどこでもネットに接続可能
・ペンが使いやすい
・長時間バッテリー
長所と短所がはっきり分かれました。それだけに使う人を選ぶPCだと言えます。
気になるのは性能面。
やはりスマホ用のCPUで多くは望めないということでしょうか。当レビューでは第10世代のCore i3程度、もしくはそれ以下という結果でした。またWindowsの起動も遅かったのが気になります。
長所は、長時間バッテリーとどこでもネットに繋がるという点です。
外に持ち出して長時間使いたい人、例えば営業の外回りでパソコンを使いたいビジネスマンとかには良さそうです。