LenovoのThinkPad X1 Nanoは2020年12月発売のモデル。
- 13.0型907g
- ディスプレイは16:10の2K液晶(2160×1350)
- 4G、5Gモデルも買える
という特徴をもっています。
ThinkPad史上最も軽い機種となるX1 Nano。
手に持ったとき、ThinkPadもとうとうここまで軽くなったか!と感慨深くなりました。が、軽くなることが良いことばかりでもありません。
特にThinkPadは、キーボード、トラックポイントという2つの入力デバイスに大きな特徴を持っているので、その良さが保たれているどうかが評価のポイントとなります。
ThinkPad歴の長い筆者が厳しめに評価してみました。
レビュー機のスペック
・CPU: Core i7-1160G7
・メモリ: 16GB
・SSD: 512GB
・ディスプレイ: 13.0型 (2160×1350) 非光沢
・USBポート: USB-C x2
・インターフェイス: ヘッドフォン
・Wi-Fi: Wi-Fi 6対応
・バッテリー: 58Wh 22.3時間
・重さ: 907g
レビュー機はCPUにCore i7-1160G7を搭載しています。
通常のノートPC用(UP3)ではなくUP4という超省電力タイプのCPUです。TDP(消費電力)は7W~15Wです。
2021年4月時点では、Core i7-1180G7というCPUに変更されていますが、発売当初は1160G7でした。両者の性能に大きな差はないので、これから購入する人も参考になるかと思います。
上記の構成で価格は23.7万円(税込、送料込)となっています。
オプションで4Gモデル、5Gモデルも選択可能です。
※価格は変動することがあります。
見た目、デザイン
本体カラーはブラック。
ThinkPadでお馴染みの黒ですが、少しだけ光沢があるので高級感があります。
指紋もあまり目立ちません。
強い光を当てると指紋が付いてるのがわかるのですが、普通に室内で使ってる分にはほとんどわかりません。
ぼくの知ってるThinkPadは指紋が目立つタイプのものが多かったのですが、このX1 Nanoではそれがかなり改善されていると感じました。
重量は907g。片手で軽々と扱える軽さです。
液晶ディスプレイは非光沢タイプで映り込みは最小限。
IPS液晶で視野角が広く見やすいです。
解像度は2K (2160×1350)
輝度は450nit
色域はsRGBカバー率100%
と優秀なディスプレイです。
しかもアスペクト比(縦横比)が16:10と通常の16:9よりも縦長になっているので、Webページを表示したときの情報量が増えてます。
デフォルトでは表示スケールは150%となっていますが、文字サイズが少し小さくてOKな人は表示スケール125%くらいが最適でしょう。
その際の当サイトの見え方は以下のようになります。
参考までに14型フルHDで表示スケール125%にしたときの見え方も貼っておきます。
2つを比較すると、最初(X1 Nano)の方が情報量が多いことがわかります。
ディスプレイ上部のカメラはIRカメラで顔認証機能付き。さらにパソコンの前から離れると自動的に画面をロックしてくれる人感センサーも付いています。
使用しないときにカメラを隠す物理シャッター(スライド式)も付いています。
良い: 907gと超軽量
良い: 高級感がある
良い: 高精細なディスプレイ
良い: 16:10で表示できる情報量が多い
ベンチマーク
CPUはCore i7-1160G7
PassMarkのベンチマークテストを実施したところ、11273というスコアでした。
Core i7-1165G7と同等もしくは少し上のスコアになります。
理論的には超省電力タイプ(UP4)のCPUがUP3のCore i7を上回ることはないのですが、CPU性能をフルに発揮できてるThinkPadの設計が素晴らしいということなのでしょう。
ちなみに電源から外してバッテリー駆動時のスコアもとってみると、11348でした。なぜか電源接続時よりも良いスコアでした。バッテリー駆動時にパフォーマンスが低下しないというのはとても良いことです。
◆リアルなアプリの快適度
さらなるテストとしてPCMark10を実施しました。
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
Essentials(一般的な利用) 9132 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)6230 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 4552 (目安3450)
すべての項目で目安となるスコアを上回りました。
ThinkPad X1 Nanoに搭載されているCore i7-1160G7は、ほぼCore i7-1165G7と同等の性能があると言っていいでしょう。
◆PhotoshopでRAW現像
実際にPhotoshopでRAW現像にかかる時間を計測してみました
行う画像処理はいつもの条件で2通りです。
条件1.何もせずそのまま現像
条件2.テクスチャ+5、明瞭度+5、かすみの除去+5
そして上記の計測タイムの結果が下のグラフになります。
青がCore i7-1165G7の平均タイム。赤がX1 Nanoのタイムです。
こちらもCore i7-1165G7とほぼ同等、もしくは少し速いタイムでPhotoshopも快適に動きます。
以上の結果をわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
○Web会議
○画像編集(RAW現像)
△動画編集
△ゲーム
という目安になるかと思います。
良い: Core i7-1160G7の性能は文句なし
良い: バッテリー駆動時のパフォーマンス低下もナシ
キーボード、タッチパッド
キーピッチ(キーの間隔)は18mm、キーストローク(深さ)は1.35mmです。
キー配列は、CtrlキーとFnキーが通常と逆という点が注意。ThinkPadユーザーは慣れているので問題ないと思いますが、初めての人は戸惑うかもしれません。
あとは右サイドのキーが小さめです。
キーボードはバックライトを搭載しているので、暗い場所でもタイプしやくなっています。
キーストロークは浅いものの、押し切った後の反発が適度にあるので打鍵感は悪くないです。
この薄さでがんばってる方だと思います。
ただしキーボード中央と端で打鍵感が違うように感じました。中央のキーは良いのですが、端のEnterキーは底打ち感があり、押したときに「カタッ」と大きめの音がします。
軽微なマイナスですが、キーボードにこだわる人には気になる点です。
トラックポイントとクリックボタンも薄型仕様です。
特にクリックボタンは、最近のThinkPad X1 Carbonと同じで、ボタンの出っ張りがなく平坦化されています。
わかりますかね?
真横から見ると、クリックするボタンがフラットになっていることがわかります。(一般的なThinkPadは山形のボタンです)
フラットな方がデザイン的には美しいのですが、クリックはしづらくなっています。
左クリックはなんとか対応できますが、画面スクロールに使う中ボタンはかなり違和感があります。右クリックは正直苦痛でした。
これはThinkPadを長く使っているほど、そう感じるのではないかと思います。
4~5年前のThinkPadから乗り換えを考えている人は注意した方がいいかもしれません。
逆に2019年以降のX1 Carbonを違和感なく使えている人なら、今回のX1 Nanoも問題ないはずです。
また中には、クリックボタンは右手ではなく左手でも操作する、あるいはクリックボタンを使わない、タッチパッドのタップで済ますという人もいるでしょう。そういった人もクリックボタン問題はあまり気にしなくても良い問題です。
微妙: Enterキーの打鍵音がやや大きめ
悪い: クリックボタンが平坦
インターフェイス(端子類)
USBポートはUSB-Cが2つ。
2つともThunderbolt 4に対応しており、転送速度は40Gbpsと高速です。
Thunderbolt 4はPower Delivery(電源供給)対応ですので、専用ACアダプタを使わずともモバイルバッテリーでの充電が可能です。また同時に映像出力にも対応しています。
他はヘッドフォンジャックのみ。SDカードスロットやHDMIはありません。
残念なのはUSB-Aポートがないという点。筐体の薄さから言ってしょうがない部分はありますが、やはりちょっと不便です。
あと、USB-Cポートが2つとも左側面というのも気になります。細かいところですが、できれば左右に1つずつ付けてくれると良かったです。
右側面は電源ボタンのみ。
このボタンは位置も良くないですし、サイズも小さいので押しづらいです。
側面じゃなくキーボード面につけて欲しかったかなと思います。
微妙: USB-Aポートがない
微妙: USB-Cが2つとも左側面
悪い: 電源ボタンが押しづらい
バッテリー、排気音、熱など
バッテリー容量は3セル48Wh
駆動時間は公称値で22.8時間です。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさを300nitに
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約6.5時間。
平均よりは少し短めのバッテリーライフでした。
公称値の22.8時間というのはちょっと言い過ぎかなと思います。
静音性や熱に関しては問題なかったです。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
バッテリー | ☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆ |
短所
・クリックボタンが平坦
・USB-Aポートなし
・電源ボタンが押しづらい
・価格が高め
長所
・907gと超軽量
・高級感
・高精細ディスプレイ
・バッテリー駆動時もパフォーマンスが低下しない
長所、短所ともに多い機種だと思います。
人によって重要視するポイントが違うので、良い点悪い点をよく吟味して購入した方がいいでしょう。ThinkPadは使う人のこだわりが半端ないので、それだけ採点も厳しめになります。
クリックボタンの平坦仕様は注意が必要です。できるなら購入前に実機をさわるなどして操作感を確かめたいポイントです。
2019年以降のThinkPad X1 Carbonを問題なく使用できている人なら、気にしなくても良いですが、古いThinkPadをずっと使い続けている人は違和感を感じてしまうはずです。個人的には以前の出っ張りのあるクリックボタンの方が好きです。
電源の位置が悪くボタンが押しづらいというのは、多くのレビュワー共通の見解です。こちらはあまり好みは関係なく不評です。
長所も複数あります。軽さ、性能、ディスプレイといった近年のビジネス用ノートに必要な条件がそろっているのは素晴らしいと思います。
あと、この軽さでしっかりCPUのパフォーマンスが出せているのは驚きました。
ただ価格がちょっと高めなので、他のThinkPadと悩むところです。
ThinkPad X13 Gen 2との比較
X1 Nano | X13 Gen 2 | |
CPU | Core i7-1160G7 | Core i7-165G7 |
ディスプレイ | 13インチ 2160x1350 | 13.3インチ 2560x1600 |
アスペクト比 | 16:10 | 16:10 |
輝度 | 450nit | 400nit |
USBポート | USB-C x2 | USB-C x2、USB-A x2 |
サイズ | 292.8x207.7x13.87 mm | 305.8 x217.06 x18.19 mm |
重量 | 0.91kg | 1.21kg |
価格 | 23.4万円 | 17.3万円 |
そこまで軽さを求めないという人なら、ThinkPad X13 Gen 2もおすすめです。
ディスプレイのアスペクト比も同じ16:10で、2K相当の2560×1600という高精細液晶を搭載しています。
そして何よりUSBポートが4つと、拡張性が段違いに良いです。
価格はX1 Nanoよりも6万安い17.3万円(税込、送料込)
コスパで選ぶならX13でしょう。
⇒Lenovoオンラインストア ThinkPad X13 Gen 2
軽さとコンパクトさを追及するならX1 Nano。
値段の高さが気になりますが、電車やカフェなどでパソコンを広げる機会の多い人ならX1 Nanoが良いでしょう。