ASUSのZenbook S 13 OLED (UX5304)は2023年4月発売。
- 13.3インチ 16:10、有機EL
- 驚異の薄さ(10.2~12.9mm)
- 重量は1.0kg
という特徴があります。
最高にかっこいいモバイルノートの1つですが、実際に使ってみるとファン音(ノイズ)に問題がありました。
対処法としては、
・専用アプリ(MyASUS)からファンモードを変更すれば静かになる
ということで一応解消できます。
ただその分性能が落ちます。個体差もあると思いますが、ここだけマイナス評価です。他の完成度が素晴らしいだけに惜しい気がします。
まずはスペックから見ていきましょう。
レビュー機のスペック
・型番: UX5304VA-NQI7W ・OS: Windows 11 Home ・CPU:Core i7-1355U ・メモリ:16GB (8GBx2) ・ストレージ: SSD 512GB ・ディスプレイ:13.3型 (2880×1800) OLED 光沢 ・USB: Thunderbolt 4 x2 (40Gbps)、USB-A x2 (10Gbps) ・インターフェイス: HDMI、ヘッドフォン ・Wi-Fi: Wi-Fi 6E対応 ・顔認証あり、指紋認証なし ・Webカメラ: FHD (1080p)、カメラオフボタン ・サイズ: 296.2×216.3×10.9-12.3mm ・重量: 1.0kg
レビュー機はCore i7-1355Uを搭載した上位モデルです。
5月18日時点では23.0万円(税込、送料込)です。
CPUをCore i5-1335Uにすると16.0万円(税込、送料込)まで下がります。
ビジネス用ならCore i5で十分かもしれません。
※最新情報はASUSのオンラインストアで確認してください
デザイン、ディスプレイ
天板はアルミの表面をプラズマ電解酸化処理しており、独特のテクスチャを持っています。
実際にさわってみると滑らかな手触り。指紋も目立たず良いデザインだと思います。
カラーはグレーで地味ですが、斜めに入ったラインがいいアクセントになっていて洗練された印象を与えます。
光の加減で天板の色は少し変わります。
重量を実際に測定すると1.05kg。ほぼカタログ値どおりです。
この軽さなら毎日持ち歩きするのも苦にならないでしょう。
薄さもすごいです。
厚みは10.9~12.5mmとなっています。
本サイトでレビューしたPCの中では最も薄いです。
参考までに14インチのLenovo IdeaPad Slim 5iと比較してみました。
左がZenbook S 13 OLED、右がIdeaPadです。
Zenbookがあまりに薄いので、右のIdeaPadにSlimと付いているのが嘘のように見えてしまいます。
ディスプレイは
・有機EL
・2.8K 2880×1800
・縦横比16:10
・光沢、タッチ非対応
・輝度(明るさ) 350nit
・色域 sRGBカバー率 100%、AdobeRGBカバー率 96%
という仕様です。
有機ELらしく、色はとても鮮やかできれいです。
2880×1800ピクセルと高精細なので、画質も文句なしです。
ただ光沢タイプなので映り込みはあります。
この例では室内の扉が映り込んでいることがわかります。
良い: 薄くて軽い
良い: 天板のデザインが独特
良い: 色鮮やかなディスプレイ
Webカメラ
Webカメラは200万画素、FHD(1080p)です。
物理シャッターは付いていませんが、F10キーでカメラをオフにできます。
また顔認証に対応しています。
写りもまずまず。
最近は顔を勝手に加工して見せるカメラも増えていますが、本機は自然な写りです。
良い: 自然な写りのカメラ。
ベンチマークとファン音
CPUはCore i7-1355U
PassMarkベンチマークテストを実施したところ、
シングルスレッド: 3767
マルチスレッド: 15673
というスコアでした。
まずまずのスコアですが、このとき気になったのがファン音。
キーンという高周波のノイズが出ています。
スマホのアプリで測定するとこんな感じ。
グラフの横軸が周波数。縦軸が音圧、つまり音の強さです。
矢印で示すように、高い周波数にピークが出ています。
このようなファン音は本機が初めてです。
そこでMy ASUSというアプリでファンモードを「スタンダード」から「ウィスパーモード」へ変更してみました。
すると先ほどの高周波ノイズはきれいに消えました。
高周波のピークがきれいになくなっているのがわかります。
そのときのPassMarkスコアは
シングルスレッド: 3690
マルチスレッド: 13038
でした。
若干スコアは下がったものの、悪くないレベルです。
本機のウィスパーモードと他機種の通常モードをスコアで比較すると以下のようになります。
第12世代のCore i5に近いスコアです。
◆リアルなアプリの快適度
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
こちらでリアルなアプリの快適度を調べてみます。
ファンモードは引き続き「ウィスパーモード」です。
結果はすべての項目で目安となるスコアを上回りました。
Essentials(一般的な利用) 9051 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)7368 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 4166 (目安3450)
しかしデジタルコンテンツ制作のスコアは目安ギリギリです。ウィスパーモードでは画像編集や動画編集には向かないことがわかります。
一般的な利用とビジネス利用の平均スコアを他機種と比較すると以下のようになります。
第12世代のCore i5、i7の中よりも上位に位置しており、ウィスパーモードでもビジネス利用までなら十分やれることがわかります。
先代のZenbook S 13 OLEDはRyzen 7 6800U搭載で優秀なスコアですが、価格が25万します。新モデルはそれよりも安く入手できるのが良い点です。
◆PhotoshopでRAW現像
最後にPhotoshopでRAW現像10枚にかかる時間を計測してみました
その結果が下の表になります。
機種 | CPU | タイム(秒) |
IdeaPad Slim 5i Gen 8 | Core i5-1340P | 5.7 |
Dragonfly G3 | Core i5-1235U | 6.9 |
ENVY x360 13-bf | Core i7-1250U | 7.9 |
ZenBook S 13 OLED | Core i7-1355U | 8.7 |
Inspiron 13 5320 | Core i3-1215U | 10.3 |
こちらもウィスパーモードで測定しています。
第12世代インテルと比較すると遅めですが、簡単な編集なら大丈夫です。
以下、動画編集、ゲームと負荷が高くなるにつれて快適とは言えないレベルになっていきます。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
△画像編集(RAW現像)
×動画編集
×ゲーム
という目安になります。
基本はビジネス利用まで。クリエイター向けではないのでそこは注意してください。
悪い: スタンダードモードでキーンというファン音
良い: ウィスパーモードなら静か
良い: ビジネス利用までなら快適
悪い: 画像編集、動画編集は厳しい
キーボードの配列と打鍵感
キーピッチ(キーの間隔)は18.7mm、キーストローク(深さ)は1.3mmです。
Enterキー、Backspaceキーが横をくっついてしまったのはマイナスですが、打鍵感は良いです。
ボディの剛性が高く、キーをタイプしても安定感があります。
もちろんバックライトも付いています。
あとタッチパッドが130x82mmと広く使いやすいです。
良い: 打鍵感はかなり良い
良い: タッチパッドが広く使いやすい
微妙: EnterとBackspaceが横をくっついている
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが2つとUSB-Aが1つです。
USB-CポートはThunderbolt 4なので
・高速 40Gbps
・PD対応 (typeC充電可能)
・映像出力可能
と万能ポートです。
非常に薄型にもかかわらずUSB-Aが1つ残っているのも良い点です。
他は、HDMIとヘッドフォンジャックが付いています。
軽量ノートとしてはまずまずの拡張性です。
良い: Thunderbolt 4が2つ
良い: USB-Aも1つ残っている
バッテリー、排気音、熱など
バッテリー容量は63Whと平均より大きい容量です。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約8.0時間でした。
XPS 13 Plus | 5.3時間 |
Dragonfly G3 | 6.5時間 |
IdeaPad Slim 5i Gen 8 | 6.5時間 |
Zenbook S 13 OLED | 8.0時間 |
ENVY x360 13-bf | 10.0時間 |
バッテリーライフは優秀。平均より長めでした。
負荷時に温かいレベルの温度になりますが想定範囲内。熱も問題なしです。
ファン音についてはベンチマークの章に書いたのでここでは省きます。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆☆ |
バッテリー、熱、音 | ☆☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆☆ |
短所
・高周波のファン音が気になる
長所
・薄くて軽い
・OLED(有機EL)で色が鮮やか、コントラストもしっかり
・打ちやすいキーボード
・インターフェイスもまずまず
ファン音についてはファンモードを変えることで対処可能ですが、それにより性能が低下してしまうのがマイナスです。
参考までに国内の他のレビューを見てみましたが、同様の報告はありませんでした。個体差のせいかもしれないので、そこまで気にする必要はないかもしれません。
ただN=1とは言え、ユーザーにとっては無視できない事実であることも確かです。
一方、良い点は4つ。その中でも一番は薄さと軽さでしょう。
天板のデザインもいいので、ビジネスノートとして外で使っているとカッコ良く決まるのでと思います。
キーボードも以前より進化しており仕事ができるPCとして活躍してくれそうです。
あと地味ですが、USB-AポートやHDMIがあるのも確実にプラスです。
レビュー機はCore i7で23.0万ですが、おすすめはCore i5の16.0万です。
7万も安くなるのは大きいです。今後もこの価格差のままかどうかはわかりませんが、現状ではCore i5のコスパをとりたいです。
【追記】
ZenBook S 13 OLEDの海外レビューを読むと、熱設計、ファン周りの問題点に言及している事例がありました。まさしく当サイトのレビュー機と同じ現象です。
記事タイトルを英訳すると「世界で最もスリムな有機ELウルトラブック、迷惑なファンに苦慮」となります。
Zenbook S 13 OLEDは6月30日まで返品保証がついています。もし上記の問題があった場合は、製品到着日より30日以内に申し込みすれば代金を返金してもらえます。
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