A級順位戦、羽生三冠 vs. 広瀬八段の中盤戦。
ここから64角、46歩、77銀と進みました。
たった3手ですが、とても濃密な3手です。
さすがA級順位戦は違うな~と思いました。
まず羽生さんの64角、指されてみればなるほどです。
後手は45銀と桂を取ると、以下同銀、同銀、43歩、同金となり、さらに先手は44歩と叩くか、84銀と打って73角成を狙うなど、桂損ですが、しばらくは先手のターンが続きます。
後手側しても悪いということもないのですが、しばらく辛抱が続く展開。しかも相手は羽生さんですからね。ちょっと自信ない分かれでしょう。
つまり64角は先手を取るためにあらかじめ64へ角を逃がしたということですね。
そこで広瀬八段は46歩。
今さっきまで角が居た場所へ歩を打つ。もちろん取れば今度こそ45銀。
この応酬もさすがです。
放置すれば47歩成で先手の陣形を乱したり、37角、29飛、63銀と64角を捕獲するような手もあります。
非常に含みの多い手で、いかにもプロ好み。
しかし最後の羽生さんの77銀がまたすごい。
いや、これ、ぼくは正確に理解していないのですが、とにかくこの手を指せるのは一流のプロしかいないなというのはわかります。
隣で同じA級順位戦の対局中だった渡辺竜王も、この77銀に釘付けだったようです。自分の対局じゃないのにね(笑)
でも本当にこれは
1.常人は考えもつかない手で、
2.しかもいまだに指し手の意味がよくわからない
3.それでいて明確に損な手とも言えない
不思議な一手です。
直接の狙いは、66の歩を取る催促っていう意味くらいでしょうか。後は何かの変化で55角が王手になるのを消しているとか。
基本的には、相手に動いてもらってその流れに乗じてという感じですよね。
羽生さんはこういう間合いの取り方が本当にうまいです。
実戦は77銀以下、47歩成、同金、67歩成、同銀、45銀と進みます。
桂損ですが、拠点となっていた4筋と6筋の歩が消えすっきり。そして手番は先手。
これなら指せる・・アマチュア有段者くらいでもそういう印象を持てる局面です。
以下は、56金と当て、同銀、同銀、95歩という進行。
最後の95歩はやや甘く、先手は84銀から完全にペースを握ることができました。
結果論になりますがここは85桂。狙われている桂を逃げながら、77銀へ当てる。77銀を咎めにいくような手であれば、難解ながらも後手良しというソフトの評価でした。
まあそれにしても羽生さん、やっぱりつええな~というのが正直な感想です。
「羽生 52銀」「羽生 66銀」とか羽生さんには銀にまつわる妙手が多いですが、今回の77銀は52銀や66銀よりも、凄い一手だと思いました。
まあ素人受けしない手なので、全く話題になっていませんけどw
でもこういう手を見るとまだまだ将棋って奥深いんだな~って思います。