2006年のA級順位戦 羽生-藤井
居飛穴-振り穴という戦型なのでアマチュアも興味ある形ですね。
中盤、羽生さんの攻めが切れかけていて藤井さん優勢の局面。
ここで羽生さんの指した23金がすごい一手でした。
直接のねらいは桂馬を取って55桂。これで相手の飛車を取ってしまうのがねらいです。
そこで23金に相手は54歩と桂馬にヒモをつけながら飛車に逃げ道を確保します。
先手は36歩と突いて銀を追い払い、
24金とじっと歩をとって歩切れ解消。しかしこんなところに金を打って、たった一枚の歩を取る手が良いはずはありません。常識的には。。。
羽生さんはそんな常識を覆すかのように、この後入手した歩を頼りに桂頭を攻めて「と金」を作り、また相手の馬筋を消す利かし48歩などが入り、最後は9筋8筋からの玉頭戦(?)を制します。
形勢はすでに羽生さん勝勢。
ここからの寄せも見事です。
23金はアマチュアがマネをするとダメなやつですが、ここからの寄せの手順はぜひマネしてください。
▲83歩 △同飛 ▲84歩 △53飛 ▲73歩 △同飛
歩を使って相手の陣形を崩し、
最後は91角!
ズバッと大技を決めました。
以下、同玉に73金と飛車を取って83歩成で一手一手です。
将棋には「一歩千金」という格言がありますが、実際に一枚の歩が金と同等の価値を持つ場面なんてあり得ません。
そんな中で非常に稀な例外(格言的には例外じゃない)を示したのがこの一局です。歩切れ解消を追求した結果が名手23金を生み出したと言えるでしょう。