渡辺棋王-千田六段の棋王戦第二局の終盤戦。
先手の千田六段が優勢でしたが、渡辺棋王の24角で一気に差が詰まったように見える場面です。
まずこの24角(持ち駒の角を打った)は、当然に見えてなかなかアマチュアでは見えない手です。
飛車取り、かつ69桂成からの攻めを見ています。
アマチュアはどうしても69角とか29飛とかに目がいきますが、それらはこの局面では問題外の一手だということをよく理解しないといけません。特に69角以下を掘り下げているようでは、いつまでたっても上達しません。
さてこの24角の局面で、先手の千田六段は74桂と指しました。
この手は好手。
同歩に66馬と王手で迫ります。
ここで後手は92玉とかわしましたが、ここは73桂打と合い駒をする方が良かったようです。
実戦では決め手が出ます。
答えを見る前に、考えてみてください。
95歩!
これが決め手です。
端玉には端歩。よく言われる手筋ですが、この端歩が一見遅いように感じられるので、アマチュア有段者クラスでもなかなか正解にたどり着くのは難しいのではないでしょうか。
実はこの遅そうに見える95歩が、詰めろなんですよ。
69桂成と攻める手は詰んでしまいます。
93銀、同桂、82金、同金、同馬、同玉、73金打、92玉、72飛成、同金、81銀、同玉、72金右、92玉、82金まで。
69桂成がダメなら42角と飛車を取る手は?
これは94歩と取り込んだ手が93銀以下の詰めろでこれもほぼ受けナシ。
ということで実戦では、96桂という離れ業のような一手で返します。
同香なら、そこで42角と飛車を取り、94歩の取り込みに98飛から9筋の香車を抜いて粘る筋があります。
しかし千田六段は読み切っていました。
96桂に構わず、93銀と放り込みました。
同桂は82金からの詰み。
同玉も94歩からの詰み。
見事な即詰みで勝利し、棋王戦の対戦成績を1勝1敗のタイにしました。
なお、最初に戻って24角の局面では71馬以下の即詰があるようです。
71馬、同金、72金、同金、71銀以下
(1)同玉は62金が好手。
同金、82金、同玉、62飛成となれば、龍が64に引ける形になっていて簡単に詰む。
(2)93玉は、85桂、84玉、75銀、同玉、76歩、65玉、66金、76玉、75金、63玉、64金!
以下手順は長いですが、詰みです。
ただこれを見つけるのはかなり難しいので、千田六段が実戦で指した74桂は次善手として褒められる一手だったと思います。