LenovoのThinkPad X1 Carbon Gen 10は2022年5月発売のノートPC。
- ThinkPadの王道
- 14インチ 16:10ディスプレイ
- 重さは約1.15kg
という特徴があります。
今回はThinkPad30周年を記念して作られた特別仕様モデル(29.7万円)をレビューしていきます。
実際に使ってみてわかった結論を書くと
良い
有機ELでコントラストがしっかり。色が鮮やか。
CPU性能をフルに発揮できている
FHDのWebカメラがきれい。
悪い
SDカードスロットなし
バッテリーライフが短い
ちょっと価格が高め
となります。
レビュー機のスペック
・Windows 11 Pro 64bit
・CPU:Core i7-1260P
・メモリ:32GB LPDDR5-5200MHz
・ストレージ: SSD 512GB
・ディスプレイ:14型 (2880×1800) OLED 非光沢
・USB: Thunderbolt 4 x2 (40Gbps)、USB-A x2 (10Gbps)
・インターフェイス: HDMI、SIMカード、ヘッドフォン
・Wi-Fi: Wi-Fi 6E対応
・LTE: 5G対応 (NanoSIM)
・顔認証あり、指紋認証あり
・Webカメラ: FHD(1080p)、プライバシーシャッター、人感センサー
・バッテリー: 4セル 57Whr
・サイズ: 315.6×222.5×15.36mm
・重量: 1.15kg
レビュー機はCore i7-1260Pにメモリ32GBを搭載したハイスペック仕様です。2月28日時点では29.7万円(税込、送料込)です。
※価格は変動することがあるので最新情報はLenovoのオンラインストアで確認してください
デザイン、ディスプレイ
30周年記念モデルということで、懐かしいRGBロゴでThinkPadと入っています。
X1 Carbonの名前のとおり、ボディはカーボンファイバーを採用。
天板はそのカーボン柄が見えるデザインになっています。
ボディカラーはお馴染みの黒。高級感はそれほどないですが、ThinkPadを選ぶ人ならあまり気にならないでしょう。
重さは1.15kg
ボディの頑丈さとの兼ね合いでこのくらいが限界でしょうか。
驚くほどの軽さではないですが、持ち運びは苦にならないと思います。
ディスプレイは
・有機EL
・2.8K (2880×1800)
・縦横比16:10
・非光沢
・リフレッシュレート 60Hz
・輝度(明るさ) 400nit
・色域 sRGBカバー率 100%、AdobeRGBカバー率 97%
という仕様です。
有機ELらしく、色は鮮やかできれいです。
有機ELで非光沢というのは意外とめずらしいです。光沢ディスプレイだと映り込みが気になるので、非光沢なのはうれしいポイントです。また2800×1800と高解像度、かつ色域も広いの画像編集にも適した仕様になっています。
WebカメラにはFHD(1080p)。
写りも上々です。
最近は顔を自動で加工するようなカメラもありますが、本機は自然な写りです。
カメラをオフにできるプライバシーシャッターがついているのも安心な点です。
良い: 有機ELで色が鮮やか。色域も広い
良い: Webカメラが平均以上
ベンチマーク
CPUはCore i7-1260P
PassMarkベンチマークテストを実施したところ、
シングルスレッド: 3358
マルチスレッド: 19993
というスコアでした。
1260Pの平均よりも17%高いスコアで期待以上の結果です。
ちなみに電源から外した状態で同じテストを行うと
シングルスレッド: 2757
マルチスレッド: 16187
でした。
バッテリー駆動時は性能低下があります。
◆リアルなアプリの快適度
当サイトが重視するベンチマークテスト、PCMark10の結果を見てみましょう。
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
結果はすべての項目で目安となるスコアを上回りました。
Essentials(一般的な利用) 9170 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)6548 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 6105 (目安3450)
Core i7-1255U搭載のHP Spectre x360 14-efと比べてみます。
ThinkPad X1 Carbon Gen10 | Spectre x360 14-ef | ||
Core i7-1260P | Core i7-1255U | スコア差 | |
アプリ起動 | 10646 | 11834 | -10.0% |
ビデオ会議 | 7897 | 6760 | 16.8% |
Webブラウジング | 9172 | 8527 | 7.6% |
表計算 | 6252 | 6398 | -2.3% |
文章作成 | 6860 | 6278 | 9.3% |
画像編集 | 10429 | 8735 | 19.4% |
レンダリング | 3704 | 3227 | 14.8% |
動画編集 | 5892 | 3044 | 93.6% |
アプリ起動はSpectreの方が上ですが、負荷が高くなるにつれてCore i7-1260Pが優位に立ちます。特に動画編集での差が大きく出ました。
◆PhotoshopでRAW現像
PhotoshopでRAW現像10枚にかかる時間を計測してみました
その結果が下の表になります。
機種 | CPU | タイム (秒) |
ThinkPad X1 Carbon Gen10 | Core i7-1260P | 5.5 |
dynabook GZ/HV | Core i7-1260P | 5.6 |
XPS 13 Plus | Core i5-1240P | 6.4 |
Spectre x360 14-ef | Core i7-1255U | 6.7 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | 7.1 |
ThinkPad X1 Carbon Gen9 | Core i7-1165G7 | 9.0 |
モバイルノートの中では過去最速タイムです。
旧モデルのX1 Carbon Gen 9よりも大幅に高速になっています。
◆Davinci Resolveで動画編集
180秒のFHD動画(30fps)の書き出しにかかった時間を計測してみました。
機種 | CPU | タイム (秒) |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | 60 |
ThinkPad X1 Carbon Gen10 | Core i7-1260P | 88 |
ENVY x360 13-bf | Core i7-1250U | 93 |
dynabook GZ/HV | Core i7-1260P | 109 |
XPS 13 Plus | Core i5-1240P | 122 |
Spectre x360 14-ef | Core i7-1255U | 131 |
書き出しはCPUのマルチスレッド性能に依存するのでRyzenが速いです。
本機はインテルの中では優秀なタイムでした。ただし外部GPUを搭載していないため、4K動画の編集となると厳しいと思います。
◆軽めのゲーム
最後にファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ(2021年発売)でベンチマークをとってみました。
1920×1080 標準品質(ノートPC)という条件でスコアは6453、「やや快適」という結果でした。
機種 | CPU | グラフィックス | スコア |
DAIV 5P | Core i7-11800H | RTX 3050 | 18971 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | Radeon 680M | 8420 |
ThinkPad X1 Carbon Gen10 | Core i7-1260P | Intel Iris Xe | 6453 |
XPS 13 Plus | Core i5-1240P | Intel Iris Xe | 6160 |
Spectre x360 14-ef | Core i7-1255U | Intel Iris Xe | 5256 |
本機はグラボ非搭載なのでゲームは厳しいです。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
〇画像編集(RAW現像)
△動画編集
×ゲーム
という目安になります。
良い: 画像編集までならとても快適
良い: モバイルノートの中では最高クラスの性能
微妙: バッテリー駆動時のパフォーマンス低下
キーボードの配列と打鍵感
キーピッチ(キーの間隔)は19mm、キーストローク(深さ)は1.35mmです。
配列はオーソドックス。キーの形状も良いです。矢印キーが一段下がっているところもGoodです。
X1 Carbonの従来モデルは右サイドのキーも通常サイズでしたが、2021年モデルから右サイドが小さくなっています。細かい点ですが、ThinkPadのキーボードですから採点も厳しめになります。
打鍵感はまずまずですが、ストロークが1.8mmあった2018年モデルと比較するとやはり物足りない感じです。
またクリックボタンも平坦なのでクリックするときにひっかかりがありません。
これは2019年からの仕様。筆者は普段出っ張りのある古いキーボードを使用しているためこの新仕様がどうも馴染めません。特に右クリックがやりづらいです。
良い: キー配列はまずまず
微妙: クリックボタンが平坦
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが2つとUSB-Aが2つです。
USB-Cポートは2つともThunderbolt 4なので
・高速 40Gbps
・PD対応 (typeC充電可能)
・映像出力可能
と万能ポートです。
他はSIMカードスロット、HDMI、ヘッドフォンジャックが付いています。30周年記念のモデルは5G対応なのでSIMカードスロットがあります。
端子類は十分豊富に見えますが、1つSDカードスロットがないのが残念です。
これまでのX1 Carbonはビジネスノートという位置づけでしたが、Gen 10ではCPU性能が飛躍的にアップし、またディスプレイも有機ELとクリエイター向けPCへと変貌しています。
それだけにSDカードスロットは欲しかったところです。
良い: Thunderbolt 4が2つ
悪い: SDカードスロットなし
バッテリー、排気音、熱など
バッテリー容量は57Whrです。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約5.0時間と短めでした。
ThinkPad X1 Carbon Gen10 | 5.0時間 |
XPS 13 Plus | 5.3時間 |
dynabook GZ/HV | 7.5時間 |
Spectre x360 14-ef | 8.0時間 |
Yoga 770 | 8.0時間 |
2.8Kという高解像度に加え、有機ELが影響しているのでしょうか。バッテリーをもたせたいなら有機ELではなく、2.2Kの液晶を選んだ方がいいでしょう。
あと気になったのは、負荷をかけるとキーボードの左上が熱くなります。ひざの上で長時間作業するのはやめた方がいいと思います。
悪い: バッテリーライフが短い
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆☆ |
バッテリー、熱、音 | ☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆ |
短所
・SDカードスロットなし
・バッテリーライフが短い
長所
・有機ELで非光沢は貴重
・モバイルノートの中では最高クラスの性能
・FHD(1080p)のWebカメラがきれい。
ThinkPad X1 Carbonは有機ELで非光沢ディスプレイが選択できる貴重なノートPCです。
CPUがインテル第12世代になって性能アップ、ディスプレイ品質も上がり、クリエイター向けのPCと言える存在になりました。メモリも32GB搭載できます。
それだけにSDカードスロットがないのが残念です。
またバッテリーライフも短いので、持ち歩きして負荷の高い作業をする場合はモバイルバッテリーが必須となるのもマイナスです。
ただ性能は2022年発売モバイルノートでは最高クラス。
Core i7-1260Pの性能をフルに発揮できており、本格的な画像編集も快適にこなせます。
DELL XPS 13やHP Specre x360 14と比較してもX1 Carbonの性能は抜けています。
軽さと性能にこだわるなら本機が本命と言えるでしょう。
メモリ16GBの構成にすれば、もう少し安くなります。