朝日杯準決勝での藤井二冠と渡辺名人の対局は、終盤にまさかの大逆転。藤井二冠が勝利しました。
図は先手(画面下側)の渡辺名人が87香と王手し、藤井二冠が85歩と中合した場面。
AIの形勢判断は
藤井1%
渡辺99%
と渡辺名人が圧倒的勝勢。ほぼ勝ちを手中に収めていたのですが、藤井二冠の85歩に対応を誤ってしまいました。
ここは素直に85同香が最善でした。
そもそも85歩の意味は、85香に74玉とかわして上部への脱出をねらった手です。
渡辺名人はここでどう指したらいいか時間がなくてわからなかったようですが、局後にご自身で語っておられたように、ここでは73金!という手があり、即詰みなんですね。
この73金は見えにくいです。
この手が見えていれば渡辺名人の勝ちでした。
渡辺名人は85歩に84歩と打ちましたが74玉とかわされて逆転。
将棋の怖さを思い知らされた場面でした。
74玉以下、75銀、同玉、76金、74玉、55飛と進みます。
先手は55の香を取って、75香以下の詰みをねらっているので55馬と飛車を取り返すことはできません。
しかしこの局面では、すでに藤井二冠の読み切りでした。
57銀、69玉、68歩以下即詰みに打ち取り、見事な逆転勝利を決めました。
ちなみに57銀に同飛も、同桂成、同玉、56飛となって後手勝ちです。
最後の56飛が76金取りになっていて、いいタイミングでこの金を取ってしまえば後手玉が相当安全になるのが大きいですね。
渡辺名人としては悔しい一局となりました。
感想戦でも自嘲気味に話されていたのが印象的でした。
藤井二冠は絶対的な不利な局面でも諦めずに、決め手を与えなかったのが流石でした。
今回の将棋はAIの形勢判断付きでその逆転シーンをリアルタイムで観戦できました。とてもエキサイティングなシーンでしたね。
以前に書きましたが、将棋初心者でもこういうしびれる場面を楽しむことができるようになったことはすごく大きいと思います。
朝日杯の決勝は本日14時から。藤井二冠と三浦九段の対戦です。