単焦点レンズSEL85F18を買って3か月が経過。
ようやく新しいレンズにも慣れてきました・・と言いたいところですが、残念ながらそうではありません。
むしろ、このレンズの難しさを痛感しており、手放すことも考え始めています。
とても評判の良いレンズなのですが、ぼくとは相性が悪いみたいです。
「街並みと人」を1つの風景として切り取るようなスタイルには、このレンズは不向きだなと思いました。素直にポートレートや草花などを撮るのが良いのかもしれません。
実際このレンズを使った写真で「いいな、これ!」というのに出会ったことがありません。多くのレビューサイトを読みましたが、自分も撮りたいと思うような写真は1枚もないのです。
くり返しになりますが、自分の好みの写真とこのレンズの相性の悪さ、これに尽きると思います。
ぼくの普段の写真は、ストリート、モノクロ、シルエット。
こういう写真を撮っています(それぞれ75mmと28mmでのショット)
画角は当然違うのですが、それ以上にSEL85F18の「ある大きな問題」のせいで、自分好みの写真を撮れない苦悩が続いています。
以下ではその具体例をいくつか見ていきたいと思います。
ぼくはSony NEX-7にこのレンズを付けて使用しており、画角は127.5mmとなります。
1.雨、夜、傘
自己評価 ☆☆☆(満点は☆5個)
数メートル先の人を撮って、街をボカすという構図には良い画角。
雨で傘を差してるのがポイント。夜に後ろ姿を撮ると、どうしても被写体が暗くなってしまうが、ビニール傘が光を反射してくれているので良いポイントになっている。
2.晴れ、昼、シルエット
自己評価 ☆☆
望遠向きのロケーション。
f=8.0まで絞って撮ったのだが、シルエットだけ拡大するとどうもボケてる感じ。
逆光時のAF精度の問題なのか、それとも逆光時の描写が甘いのかよくわからないが、似たような状況で似たような失敗作が多い。
ピーキング機能で人物にピントが合ってるのは確認しているのだが、後でPC画面で確認するとボヤけてるという現象。
偶然かもしれないが、太陽が画面端で、遠めの被写体を狙う構図で多い。
あとシルエット以外のシャドーも締まらないという印象。
3.晴れ、昼、風景
自己評価 ☆☆☆
同じ場所で違う角度から。
先ほどよりもだいぶコントラストがしっかり。
4.晴れ、昼、風景
自己評価 ☆☆☆
逆光で撮ると、フレアが出やすい。フレアが出ると、シャドーがぼやける。
コントラストをしっかりつけたモノクロで現像するとあまり良く見えないので、別の現像方法を試している。
自転車のフレームなど光が当たってる部分の描写はさすがだと思うが、手前の男性の服装などシャドーが汚い。
5.晴れ、昼、風景
自己評価 ☆☆
そこまで強い逆光でなくてもフレアは出る。
ゆるふわな雰囲気にしてそれっぽく現像したが、こういう描写は自分の求める方向性とは真逆。背景のボケと光とかを見てると日本のSNS向きかなという感じ。
こういうのが好きな人もいるだろうが、「生理的にムリ!」なので別路線を模索するしかない。
ちなみに上の写真をこのままモノクロにすると下のような写真になる。
とても眠たい写真で見れたもんじゃない。
6.曇り、夕方、遠景
自己評価 ☆☆☆
逆光の風景でもこんな感じは悪くない。ただこれも自分が撮りたい写真ではない。
7.晴れ、夜、人物
自己評価 ☆☆
夜に近めの人物を撮って背景をボカすと構図としての収まりは良い。
ただ最初に言ったように後ろ姿では写真としての魅力は半減。またピントを合わせてから一瞬考えてしまうと、その間に被写体が移動してピントが外れてしまう。
正面から撮るなら、ポートレート。被写体が止まっている状態がベスト。わかりきったことだが、このレンズはポートレート向きだ。
8.晴れ、夜、車
自己評価 ☆☆☆
通行人が撮れないなら、車ならどうか?と試した一枚。
車体のメタル感、背景のボケなどはけっこういい感じだが、ピントがやや後ろに抜けてしまってる。
これも半押ししてから一瞬考えてしまった系。
コンティニュアスAF使えよと言われるかもしれないが、それだと最初に被写体を捕まえるまでに迷うことがあるので咄嗟にMFで合わせられるようにDMFで撮っている。それが裏目に出た。
失敗に終わったが、走行中の車を被写体にするのはアリかも。
ただヘッドライトが逆光になってここでも描写が乱れるのが痛い。
9.雨、夜、シルエット
自己評価 ☆☆☆☆☆
構図をしっかり作って撮った1枚。
道路が濡れて反射する場合の逆光は問題ないようだ。シルエットもしっかり。
条件がすべてはまるのは極めて稀だが、はまるとさすがに凄い。
10.晴れ、昼、ブツ
自己評価 ☆☆☆
逆光でも近くのものを撮る場合の描写は良い結果になることが多い。ただこれだと見る人に「解像してますね~」以上の感想を持たすことが難しい。
以上10枚ほど例を見てもらいました。
自己評価で☆が4つ以上あれば一応満足できるレベルなのですが、ほとんどが☆3つ。合格ラインに一歩届かずという写真が多いです。
納得できる写真は1枚だけ。いわゆる歩留まりは非常に悪いです。
問題をまとめると
・逆光時のフレア、コントラスト低下
・ピント合わせ
・シルエットが汚い、ボヤける
主にこの3つです。
ピント合わせは撮る側の問題なので、もっと技術を磨けばなんとかなりそうですが、それ以外の2つはけっこう厳しいです。
特に撮る写真の95%以上が逆光で、人物のシルエットを主題とするぼくには致命的かもしれません。
被写体に光を当てるというのが通常の写真なのですが、ぼくは被写体に光を当てないように撮るスタイルなんですよね。
しかしこのレンズの良さは出すには、光を当ててこそだと思います。
通行人に光を当てると、顔が写ってしまうという問題が出てくるので、人物シルエットを諦めたとしても、それに代わる被写体探しがとても難しいです。
ただ9枚目の写真ように、雨で濡れた地面を背景にした構図では、驚くような一枚が撮れるので、100%手放す気持ちになれない部分もあります。
ぼくにとってSEL85F18は、とても気難しいレンズです。
5万円台。そこまで高いレンズではないですから、それなりに弱点があるのが当然だと思いますが、その弱点がぼくが最も譲れない部分だというのが残念です。
なので、このレンズを手放しで褒めているレビュー記事を読むとちょっと腹立たしいです。
そういう記事では逆光時の描写についてほとんど言及されていません。
滑らかなボケ、開放からカリカリ解像・・・
そんな誰でも言えるような賛辞が並びます。
そしておしなべて作例は下手です。
下手というか、つまんない写真が多いです。
唯一、良かったレビュー記事はこれです。
⇒ https://phillipreeve.net/blog/review-sony-fe-85-mm-1-8/
今回の経験を通じ、レンズはカタログスペック以外の部分が大切だなと感じました。
しかし自分に合ったものばかりを選んでいては、写真がワンパターンになるというリスクもあるわけで話は単純ではありません。
このSEL85F18を買った理由の1つは、まさしくワンパターンからの脱却でした。
そのことをもう1回思い出して、しばらく使い続けてみようと思います。