ノートパソコン選びで最も注意すべきはディスプレイだと主張したいです。
CPUやメモリは「注意しなくても」普通に入ってくる情報ですが、ディスプレイは積極的に情報を取りに行く必要があるからです。
- ディスプレイの仕様をきちんと公表しているメーカーが少ない
- 輝度や色域など多くのチェック項目があって複雑
- 5万~10万くらいの価格帯で一番差が出やすい
- あるいは、弱点を隠しやすい
というのがディスプレイ。
そう、ディスプレイで誤魔化しているメーカーがいくつもあるのです。
もしCPUが単に「Core i7」とだけ書かれてあったら、「第11世代?第12世代?しっかり書けよ!」とお叱りを受けるはず。
しかしディスプレイは「FHD、非光沢」ぐらいの情報提示でOKとされている風潮があります。
この記事を書いているのが2022年10月。3~4年前までは「FHD、非光沢」ぐらいの情報提示で許されたのかもしれませんが、今これをやるのは「意識が低い」メーカーであると思われても仕方ありません。特に、IPS液晶かTN液晶かは天国と地獄くらい差があるので、そのポイントを押さえていないメーカーはよろしくないです。
IPS液晶: 視野角広い、コントラスト高い
TN液晶: 視野角狭い、コントラスト低い、発色が悪い
TN液晶はやめた方がいいスペックの代表例です。
写真は2020年に当サイトでレビューしたTN液晶のノートPC。角度をつけると画面が黒く潰れてとても見づらくなっているのがわかります。
TN液晶は応答速度が良いのでゲーマーに好まれるという例外もありますが、基本はIPS液晶と覚えておいて間違いありません。
メーカー側からすると、「わが社のPCは質の低いTN液晶です」とわざわざ言うのは得策ではないので、そこは触れないでおこうという方針でやってるところが多いです。
「嘘は言ってないですよ」というスタンスです。
TN液晶は大体5万前後のPCに多いです。この辺の価格を買う層はどうせわからないだろうし、もし気付いてもまあ安いかったからいいかで納得してくれるだろうし、と完全に舐められているんですよね。
Lenovoはその点とても「意識の高い」メーカーです。
直販ページに行くと、TNかIPSかはちゃんと書いてあります。輝度や色域も記載されています。
このように、販売ページに小さいですが詳細に書いてあるのでとても親切です。
DELLはちょっと不親切。販売ページには一部しか書いてなくて、そのページから何度かクリックして別のページに行く必要があります。でも目的のページに行けば、仕様は細かく書かれています。
HPはほぼ全てのノートPCがIPS液晶になっていますから一応安心できます。
ただ公開されている情報はまだまだ限定的です。世界的なメーカーということもあって、ネット上に情報はたくさん転がっていますし、PCのランクでおおよそのディスプレイランクを推察できるのが救いです。
情報提示に関して点数をつけるとLenovoが95点。DELLが90点。HPが80点といったところでしょうか。
この3つのメーカーは合格点。それ以外のメーカーは、情報提示が全然足りていません。
ASUSは有機ELディスプレイを搭載したPCを多く扱っていることで有名です。ランクの高いPCは問題ないのですが、ランクが低めのPCになってくると途端に情報入手が難しくなります。
mouse、dynabook、NEC、富士通といった日本メーカーになってくると入手困難度はさらに上がり、一部のレビューサイト頼みになってきます。
ディスプレイから選ぶ理由
CPU性能がかなり上がってきた今、パソコンライフの快適さを決める上でディスプレイの占める割合が上がってきていると感じています。
ディスプレイを重要視するもう1つの理由は、ディスプレイをある程度良いものにしておけば、他のスペックは勝手についてくるからというのもあります。
冒頭で述べたように、ディスプレイで誤魔化しているメーカーが多いわけです。逆に言うと、ディスプレイがしっかりしているパソコンは他もしっかりしているということになります。
CPUのランクを上げた。
⇒ でもディスプレイがショボい
ということはよくありますが、
ディスプレイのランクを上げた
⇒ でもCPUのランクがしょぼい
ということはほとんどないです。
5万以下だと流石に性能やばいやつが入ってくるのでいまは除外します。また15万とか20万とかそれぐらいの高級PCになってくると、CPUもディスプレイも全部良いのでこの傾向は当てはまりません。
でも5万~15万くらいまでの多くのPCは、ほぼこのパターンと言ってもいいくらい。ディスプレイで選べば、勝手に性能が付いてくるのです。
ディスプレイの差に着目すれば、PCの優劣が手に取るようにわかってきます。
A社の7万のPC、B社の9万のPC。同じ性能なのに何が違うのだろう?の答えはディスプレイであることがほとんどです。
ディスプレイのランク
ディスプレイのランクは大体次のように決まっています。
液晶 / 有機EL | 解像度 | TN / IPS | 輝度 | 色域 | コントラスト | 価格 | 主観 | |
ランクE | 液晶 | 1366x768 | TN | 250nit以下 | 不明 | 400:1 | 4万以下 | 30点 |
ランクD | 液晶 | 1920x1080 | TN | 250nit | sRGB 63% | 500:1 | 5万 | 50点 |
ランクC | 液晶 | 1920x1080 | IPS | 300nit | sRGB 63% | 700:1 | 7万 | 70点 |
ランクB | 液晶 | 1920x1080 | IPS | 300nit | sRGB 100% | 1000:1 | 9万 | 80点 |
ランクA | 液晶 | 2560x1600以上 | IPS | 400nit | sRGB 100%以上 | 1500:1 | 12万~ | 90点 |
ランクA | 有機EL | 2560x1600以上 | IPS | 400nit | sRGB 100%以上 | 10000:1 | 13万~ | 95点 |
ランクEが最低ランクでこのランクは絶対選ばないようにしましょう。質の低いTN液晶ですし、解像度も低いです。点数をつけるなら30点のディスプレイです。
ランクDも避けたいディスプレイ。
点数は50点です。このランクDのPCを初心者は買ってしまいがちです。ちょうど5~7万くらいの買いやすい価格で誘惑してくるので注意しましょう。CPUとメモリだけ見てるとその罠にひっかかりやすいです。
ランクCからようやく合格ラインになります。
解像度がFHDで、IPS液晶。このランクなら、ネットや動画視聴は快適に使えます。
点数は70点。ランクDから一気に20点もアップします。
ランクBになると色域が広くなります。
sRGBカバー率100%は、Web上の標準色を100%カバーしているディスプレイになります。ディスプレイの色にこだわるならこのランクB以上が推奨となります。ランクCとの差でわかりやすいのがコントラストです。
ランクAは解像度、輝度がさらにアップします。また色域もさらに広く、sRGBの色空間では表現できない色までもカバーしたものになります。一般にクリエイター向けディスプレイと言われるのはランクAからです。ただ条件を全て満たしてなくてもクリエイター向けに入れるケースもあります。色域はランクBでも解像度と輝度はランクAといったような場合です。
最後は有機EL(OLED)です。
有機ELは液晶よりも圧倒的に色彩が豊かで、コントラストが高いのが特長です。ただ画がコッテリしすぎるので好みが分かれる部分もあります。ランクSにしても良かったのですが、一応ランクAにとどめておきます。
このようにディスプレイのランク分けは、CPUのCore i3、i5、i7・・ほど簡単ではありません。解像度、輝度、色域の他にもリフレッシュレートやアスペクト比も評価のポイントとして入ってきますから、パソコンに詳しくない人が躓くのも無理はありません。
そんなに細かくランク分けする必要があるの?と思われるかもしれません。
でも実際に使ってみると、満足度はかなり違います。いまはスマホの綺麗な画面に慣れているので、余計にパソコン画面との差を実感できるはずです。
特にランクDとCの差。
TN液晶とIPS液晶の差は、筆者の主観ではありますが点数で20点も違います。
ここは最低限クリアするようにしてください。
まとめると、
・一般向けならランクCかBを買おう
・クリエイター向けならランクAを、妥協するならランクBを買おう。
となります。
ディスプレイ情報の調べ方
メーカーによってはディスプレイの詳細情報を公開していないことがあります。
その場合は、
・メーカーに直接電話して聞く
・ネットで検索して調べる
の2つくらいしかありません。
メーカーに直接問い合わせるのが確実そうですが、答えてくれない場合もあります。
ディスプレイの品質には幅があるのが普通で、カタログ上は輝度300nitとなっていても実際には270nitとか明るさが足りないこともあります。そうした場合のクレームをあらかじめて回避するために、ディスプレイの詳細情報を教えてくれないメーカーもあるのです。
そうなると、ネットで調べるしかありません。
ネットで検索する際に筆者がよく使うのは
「機種名 + nit」、「機種名 + sRGB」
というように、知りたい機種の名前とディスプレイの仕様に使われる特徴的なキーワードです。
これらのキーワードでヒットすればいいですが、発売直後やマイナーな機種だとヒットしないこともあります。
5~10万くらいで選ぶなら、やはり最初から情報をちゃんと提示してくれているLenovo、DELL、HPがおすすめです。
ディスプレイ選びの例
例としてLenovoのIdeaPadシリーズで比較してみます。
IdeaPad Slim 170と570の2つの機種。
IdeaPad Slim 170 | IdeaPad Slim 570 | |
CPU | Ryzen 5 5500U | Ryzen 5 5625U |
メモリ | 8GB | 8GB |
SSD | 256GB | 256GB |
解像度 | 1920x1080 | 1920x1080 |
TN/IPS | TN | IPS |
輝度 | 220nit | 300nit |
sRGB | 63% | 63% |
価格 | 5.5万 | 7.0万 |
CPUはRyzen 5でメモリも8GBあります。
価格は170の方が5.5万と安いです。
初心者ならどっちを買おうか迷っても不思議ではありません。
しかし、ディスプレイのランクを知っていれば、答えは簡単です。
買うべきはIdeaPad Slim 570です。
170のディスプレイはランクDです。TN液晶ですし、輝度も220nitで明るさ不足。
対する570のディスプレイはランクC。IPSで輝度も300nitあり合格ラインです。
価格差は1.5万ですが、これをケチると大きな後悔が待っています。
迷わず570(高い方)を買いましょう。
何度も言うようですが、とにかくランクD以下を避ける。最低限これは守っておいてください。
アスペクト比
最後にアスペクト比(縦横比)についても書いておきます。
ノートPCのアスペクト比は16:9が一般的でしたが、2022年からの主流は16:10です。
(16:10よりもさらに縦に長い3:2のディスプレイもちらほら見かけます)
16:9に比べ、16:10は縦に長いので情報量が増えて作業効率アップにつながるというメリットがあります。
16:10がプラスであることは確かですが、16:9だからと言って大きなマイナスにはならないと思います。
16:9も一応アリというふうに考えておきましょう。
まとめ
- パソコンライフにおけるディスプレイの重要度が上がっている
- 5~10万のPCはディスプレイで決まる
- TN液晶はやめとけ(基本問題)
- 輝度や色域まで選べるようになるとGood(応用問題)
- 16:10だとうれしい、16:9も一応あり
CPUやメモリも重要ですが、これらはどこのサイトでもしつこいくらい繰り返し書かれてあることです。今さら当サイトで書く内容ではないと思い、今回は切り口を変えた記事にしてみました。
◆ 参考記事