DELLのXPS 13 Plus (9320)は2022年5月発売のノートPC。13.4インチ、1.23kgで未来感のある攻めたデザインが特徴のモバイルノートです。
「タッチパッドはどこ?」と一瞬戸惑うこのデザイン。タッチパッドとパームレストの境目が見えなくなっているだけで、本来あるべき場所にきちんとタッチパッドは存在します。使いやすさもまずまずです。
まあタネを明かせば普通なんですが、とてもカッコ良くて美しいデザインだと思います。
実際に使ってみてわかった結論を先に書くと
良い
・タッチパッドやキーボードのデザインが良い
・薄くてカッコいい
・狭額縁のディスプレイ
・電源から外しても性能が落ちない
悪い
・バッテリーライフが短い
・Webカメラが720p
・熱問題。熱すぎることはないが、ほんのり温かい場合が多い。
・タッチバーは慣れるまで時間がかかるかも
となります。
くわしく見ていきましょう。
レビュー機のスペック
・Windows 11 Home 64bit
・CPU:Core i5-1240P
・メモリ:16GB (4GBx4)
・ストレージ: SSD 512
・ディスプレイ:13.4型 (1920×1200)、非光沢、100%sRGB
・USB: Thunderbolt 4 x2
・Webカメラ: HD(720p)
・顔認証あり、指紋認証あり
・サイズ: 295.30x199.04x15.28mm
・重量: 1.23kg
レビュー機はCore i5-1240PにFHD+のディスプレイを搭載した構成です。9月12日時点の価格は20.7万円(税込、送料込)です。
上位モデルはCore i7-1260P、メモリは最大32GBまで可能です。
ディスプレイ解像度はFHD以外に3.5K、4K(UHD)を選択できます。
FHD | 3.5K OLED | 4K |
1920x1200 | 3456x2160 | 3840x2400 |
タッチ非対応 | タッチ対応 | タッチ対応 |
輝度500nit | 輝度400nit | 輝度500nit |
sRGB100% | DCI-P3 100% | DCI-P3 90% |
60Hz | 60Hz | 60Hz |
非光沢 | 光沢 | 光沢 |
※価格の最新情報はDELLのオンラインストアで確認してください。
デザイン、ディスプレイ
カラーはプラチナシルバー。
ちょうどいい具合の光沢があり高級感があります。
キーボード面は白に近いグレーです。
とてもシャープな作りで、カッコいいです。
もうパッと見て高級なやつだとわかります。
重量は1.23kg。カタログ値と同じでした。
そこまで軽くはないですが、剛性感が高く安心できる作りです。
ディスプレイは
・FHD相当 1920×1200
・アスペクト比 16:10
・非光沢
・リフレッシュレート 60Hz
・輝度(明るさ) 400nit
・色域 sRGBカバー率 100%
という仕様。
指先と比べるとわかりますが、額縁(フレーム)がとても細いです。
視野角も広く、コントラストも良いです。
カタログには輝度500nitとありましたが、実測値では約400nitでした。
平均が300nitなのでこれでも十分明るいです。
屋外の日陰での見え方。
日陰とは言え、室内とは比べ物にならないくらい明るい場所です。相対的にディスプレイは暗くなるのですが、本機の視認性は良好です。
明るさ自体は良いのですが、カタログ値通り輝度が出ていないのは気になります。他のレビュー記事を見ても500nitには届いていないものが多いです。
sRGBカバー率100%あるので、本格的な画像編集にも使えるディスプレイです。
良い: シャープでカッコいいデザイン
良い: 高級感。パッと見ただけで高いやつとわかる
微妙: 輝度はカタログ値の500nitに達していない
良い: 色域は広く、クリエイター向け仕様
Webカメラ
Webカメラは顔認証対応。解像度はHD(720p)です。
2022年の主流はFHD(1080p)がなりつつあるので、それと比較するとスペック的には落ちます。
実際の写りはそこまで悪くないですが、これはクマのぬいぐるみの場合。
人の顔を映すと、肌をきれいに見せるような加工が入ります。その画が、いかにも安いアプリで補正しました感があるのが残念でした。解像感も落ちます。
悪い 720pのカメラ、写りも加工感がある
ベンチマーク
CPUはCore i5-1240P。
PassMarkのベンチマークテストを実施したところ、
シングルスレッド: 3530
マルチスレッド: 19619
というスコアでした。
特にシングルスレッドが高いです。
マルチスレッドだけで比較してもご覧のとおり。
Ryzen 7 6800Uよりは下ですが、他のCore i5-1240P搭載機の平均よりも高いスコアが出ました。
また電源から外してバッテリー駆動時に同じテストを行いましたが、
シングルスレッド: 3529
マルチスレッド: 19181
とパフォーマンス低下はありませんでした。
10~20%くらいの低下があるのが普通ですが、本機はそれがないです。持ち歩き中でも性能をフルに発揮できるのが素晴らしいです。
◆リアルなアプリの快適度
当サイトが重視するベンチマークテスト、PCMark10の結果を見てみましょう。
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
結果はすべての項目で目安となるスコアを上回りました。こちらは電源につないだ状態での結果です。
Essentials(一般的な利用) 8502 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)6279 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 5387 (目安3450)
悪くないスコアですが、2022年のPCとしては平均レベル。20万するPCとしてはやや物足りない感じがします。
Core i7-1260P搭載のdynabook GZ/HVとスコアを比較してみます。
XPS 13 Plus | dynabook GZ/HV | ||
CPU | Core i5-1240P | Core i7-1260P | スコア差 |
アプリ起動 | 9099 | 12200 | -25.4% |
ビデオ会議 | 7537 | 8391 | -10.2% |
Webブラウジング | 8973 | 9503 | -5.6% |
表計算 | 6361 | 6876 | -7.5% |
文章作成 | 6200 | 6760 | -8.3% |
画像編集 | 9931 | 9712 | 2.3% |
レンダリング | 3376 | 3418 | -1.2% |
動画編集 | 4664 | 5652 | -17.5% |
Core i7と比べると、スコアは全体的に下です。体感的には全く気にならない差ですが、こうして厳密に数値化すると差があることがわかります。
◆PhotoshopでRAW現像
PhotoshopでRAW現像10枚にかかる時間を計測してみました
CPU | タイム (秒) |
Core i7-12700H | 4.6 |
Core i7-1260P | 5.6 |
Core i5-1240P | 6.4 |
Ryzen 7 6800U | 7.8 |
Core i7-11800H | 8.6 |
Core i7-1165G7 | 8.7 |
Ryzen 7 5800H | 12.7 |
タイムは6.4秒とまずまずの速さでした。Core i7-11800HやRyzen 7 6800Uよりも速いです。
◆Davinci Resolveで動画編集
動画編集ソフトのDavinci Resolveで180秒の動画をyoutube用に書き出すのにかかった時間を計測してみました。。
機種 | CPU | タイム(秒) |
Legion 570i | Core i7-12700H | 40.4 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | 59.8 |
Zenbook S 13 OLED | Ryzen 7 6800U | 67.5 |
IdeaPad Slim 560 Pro | Ryzen 7 5800H | 79.4 |
Pavilion Aero 13 | Ryzen 7 5800U | 92.6 |
dynabook GZ/HV | Core i7-1260P | 108.7 |
XPS 13 Plus | Core i5-1240P | 122.4 |
書き出しはマルチスレッド性能とCPUパワーの持続力が必要ですが、本機はそれがちょっと弱いようです。
◆軽めのゲーム
最後にゲーム性能の定番ベンチマーク、ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ(2021年発売)です。
1920×1080 標準品質(ノートPC)という条件でスコアは6160、「やや快適」という結果で平均フレームレートは40fpsでした。
機種 | CPU | グラフィックス | スコア |
Legion 570i | Core i7-12700H | RTX 3050 Ti | 20956 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | Radeon 680M | 8420 |
Yoga 770i | Core i7-1260P | Intel Iris Xe | 6532 |
XPS 13 Plus | Core i5-1240P | Intel Iris Xe | 6160 |
IdeaPad Slim 560 Pro | Ryzen 7 5800H | AMD Radeon | 5176 |
本機は外部GPUを搭載していないので、ゲームは厳しいと思います。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
○Web会議
〇画像編集(RAW現像)
×動画編集
×ゲーム
という快適度になります。
良い: Adobeの画像編集は快適。
良い: 電源から外した状態でもパフォーマンスが低下しない
微妙: 普段使い~ビジネス利用では2022年のPCで平均レベル。
悪い: 動画編集、ゲームは厳しい
キーボードの配列と打鍵感
キーピッチ(キーの間隔)は19mm、キーストローク(深さ)は1.0mmです。
ストロークは浅いですが、打鍵感は悪くないです。
キー配列もきれいなのがいいですね。
電源ボタンは右端のこれ。
何も印字してないので、最初どこにあるか探しました。できれば電源のマークを印字しておいてほしいです。
キーボードにはバックライト付きなので暗い場所で使うときもタイプしやすいです。
タッチパッドは境目が見えないだけで普通のタッチパッドです。
ただ触覚フィードバック付きなので、二本指でタップしたとき表面が凹むような感触があります。正直この感触はあまり好きではありません。安っぽいプラスチックをクリックしたときのような感触です。
フィードバックは設定でOFFにすることができるので、気に入らない場合はOFFにして使いましょう。
良い: キーボード、タッチパッドの操作性は悪くない
微妙: タッチパッドのフィードバックはOFFで使いたい
タッチバー
XPS 13 Plusにはキーボード上部に一列ほどタッチバーが設けられています。
DeleteやHome、End、PrtScなどのマルチメディアキーが並んでおり、これらのキーはタッチ式です。つまりDeleteキーを押した感触がありません。そのため、ちゃんと押せてるか目視で確認するのがちょっと面倒だなと思いました。
Fnキーを押すと、メディアキーからF1~F10へと変更できます。
もしF1~F10を常時表示したい場合は、Fn + Escキーで切り替え可能です。
このタッチバーは本体の電源が入ってるときは常時点灯しています。タッチバーを消す(オフ)にする方法がないのか調べてみましたが、どうやらないようです。
部屋を暗くして映画(アマプラやNetflix)を観ようとするとき、このタッチバーの光がちょっと邪魔でした。
やはり物理Fnキーの方が使いやすいです
インターフェイス
インターフェイスはUSB-C(Thunderbolt 4)が2つだけと最小限です。
HDMIやヘッドフォンジャックもありません。
その代わり、
・USB-C → USB-A
・USB-C → ヘッドフォン
の変換アダプターが2つ付いています。
理想はもう1つUSB-Cが欲しいところ。USB-Cは電源ポートも兼ねているので、電源に接続しているときは1つしか空きポートはありません。
悪い: USBポート2つしかない
良い: 変換アダプターが2つ付属
バッテリー、排気音、熱など
バッテリー容量は55Whです。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約5.3時間と短めでした。
XPS 13 Plus | 5.3時間 |
Pavilion Aero 13 | 5.5時間 |
Surface Pro 8 | 6.5時間 |
dynabook GZ/HV | 7.5時間 |
Yoga 770 | 9.0時間 |
ZenBook S 13 OLED | 12.0時間 |
モバイルノートとしてはちょっといただけない結果です。レビュー機はFHDディスプレイでしたが、上位の3.5K OLEDや4Kを選択するとさらにバッテリーライフは短くなると予想されます。
また薄型設計のせいか、熱に関しても気になる点があります。動画視聴など軽めの作業をしてるときもほんのり熱を持ちます。エンコードなどで大きな負荷をかけたときはしばらく経ってもまだ温かいままです。
熱くて困るということはないのですが、ひんやりもなし。温かいお弁当くらいの温度になるのでその点は注意しておきましょう。音は大丈夫でした。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
バッテリー、熱、音 | ☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆ |
悪い点
・バッテリーライフが短い
・Webカメラが720p
・熱問題。熱すぎることはないが、ほんのり温かい場合が多い。
・タッチバーは慣れるまで時間がかかるかも
良い点
・タッチパッドとキーボードのデザインが良い
・薄くてカッコいい
・狭額縁のディスプレイ
・電源から外しても性能が落ちない
悪い点の中で一番気になるのは、バッテリーライフの短さでしょうか。モバイルノートとしては大きなマイナスです。普通はこれで低評価をまぬがれないところなのですが、本機の場合それ以上に魅力があるのも確かです。
他にはないデザインのノートPCで、とてもカッコいいです。つい他人に自慢したくなるPCだとも言えます。
タッチバーの問題はあるものの、タッチパッドとキーボードの使い勝手は従来のデザインと比べても見劣りしません。ディスプレイも狭額縁で色域が広く、良く出来ています。
あと電源から外しても性能がほとんど落ちないのも素晴らしいです。この点も見落としがちですが重要な評価項目です。
価格は20万~と高めですが、所有欲を満たしてくれるPCであることは間違いないです。