今回はHP 245 G10のレビューです【貸出機材提供:株式会社日本HP】
HP 245 G10は2023年4月発売のノートPCです。
- 14インチ 1920×1080 (16:9)のディスプレイ
- CPUはRyzen 7000シリーズ。ミドルスペック
- キー配列はクセがあるものの、ストロークは深め
- 重量は1.36kg
という特徴があります。
7万円台から購入でき、コスパの良いPCですが、この価格帯はDELL Inspironなど強敵がそろっている激戦区です。
今回はInspiron 14 5435と比較しながらレビューしていこうと思います。
レビュー機のスペック
・モデル名: 80D03PA
・OS: Windows 11 Home 64bit
・CPU: AMD Ryzen 5 7530U
・メモリ: 16GB (増設不可)
・SSD: 512GB
・ディスプレイ: 14インチ 1920x1080、非光沢、IPS
・USBポート: USB-Cx1、USB-A x2
・インターフェイス: HDMI、ヘッドフォン
・Webカメラ: HD(720p)、プライバシーシャッター
・顔認証なし、指紋認証あり
・重量: 1.36kg
レビュー機はRyzen 5にメモリ16GBの構成。7月31日時点では8.0万円(税込、送料込)とまずまずの安さです。
参考までにDELLのInspiron 14 5435が同等スペックで6.9~8.7万という範囲で変動しています。
※価格の最新情報はHPのオンラインストアで確認してください。
デザイン、ディスプレイ
カラーはグレー。
金属っぽい質感ですが、材質はおそらく樹脂(再生プラスチック)です。
安っぽさはなく、遠目にはアルミ合金のように見えて良い感じです。
ただボディを指を押すと少したわみます。
動画の再生ボタンをクリックして確認してみてください。
ちょっと意地悪な検証ですが、金属製のボディだとたわみがなく丈夫に作られているので、その差をはっきり知っておくことは大切だと思います。
重量は1.38kg、ほぼカタログ値と同じ重さでした。
14型としては軽めです。
アルミ合金を使用していない分、軽くなっているのがメリットです。
角度によってHPのロゴが光るのが良いですね。
ディスプレイは
・FHD相当 1920×1080
・アスペクト比 16:9
・IPS、非光沢
・リフレッシュレート 60Hz
・輝度(明るさ) 250nit
・色域 sRGBカバー率 63%
という仕様。
縦横比は16:9なのが少し残念な点です。
16:10のDELL Inspiron 14と比較すると、Webページを表示したときの情報量が16:9の方が少なくなっています。
明るさと色域は平均的。
これもDELL Inspiron 14と比較してみました。
本機はちょっと黄色が強いかなという感じ。対するInspiron 14は赤っぽい感じです。最初のWebページ比較でもそれがわかります。
良い: 1.38kgと14型の中では軽め
良い: 樹脂製ながら安っぽく見えないように仕上げている
悪い: 主流の16:10ではなく、16:9
Webカメラ
Webカメラはプライバシーシャッター付き。
解像度はHD(720p)なので、写りはそこまで良くないです。。
写真は別メーカーのFHDカメラと比較したもの。
いわゆる「抜けのいい写り」はFHDカメラの方です。
本機もHDカメラにしては明るくまずまずの写りですが、2023年のPCとしては平均以下と言わざるを得ないでしょう。
悪い: 主流であるFHDカメラとは差がある
ベンチマーク
CPUはAMD Ryzen 5 7530U。6コア12スレッドです。
PassMarkのベンチマークテストを実施したところ、
シングルスレッド: 3171
マルチスレッド: 17061
というスコアでした。
期待どおりのスコアです。
2023年のCPUではミドルレンジ。
マルチスレッドのスコアは2022年のRyzen 5 5625Uよりも13%ほど伸びています。
◆PCMark 10
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
結果はすべての項目で目安となるスコアを上回りました。
Essentials(一般的な利用) 9693 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)9618 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 5088 (目安3450)
アプリ起動、Webブラウジング、文章作成の3つの項目を「普段使いの快適度」と見なすと、本機のスコアは上位にランクインします。
機種 | CPU | 普段使いの快適度 * |
IdeaPad Slim 5i OLED | Core i5-13500H | 9481 |
HP 245 G10 | Ryzen 5 7530U | 9320 |
Inspiron 14 5435 | Ryzen 5 7530U | 9250 |
IdeaPad Slim 5i | Core i5-1340P | 9208 |
ENVY x360 13-bf | Core i7-1250U | 8606 |
Inspiron14 5425 | Ryzen 5 5625U | 8516 |
*PCMark 10テストにおけるアプリ起動、Webブラウジング、文章作成のスコアを幾何平均したもの
◆PhotoshopでRAW現像
PhotoshopでRAW現像10枚にかかる時間を計測してみました
機種 | CPU | タイム(秒) |
IdeaPad Slim 5i OLED | Core i5-13500H | 5.7 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | 7.1 |
ENVY x360 13-bf | Core i7-1250U | 7.9 |
Inspiron 14 5435 | Ryzen 5 7530U | 9.0 |
HP 245 G10 | Ryzen 5 7530U | 9.9 |
IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U | 12.4 |
本機は同じCPUのInspiron 14 5435とほぼ同タイム。2022~2023年のCPUで比較すると下位ですが、作業自体はストレスなくこなせます。
◆Davinci Resolveで動画編集
動画編集ソフトのDavinci Resolveで180秒の動画をyoutube用に書き出すのにかかった時間を計測してみました。
機種 | CPU | タイム (秒) |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | 60 |
IdeaPad Slim 5i OLED | Core i5-13500H | 66 |
Inspiron 14 5435 | Ryzen 5 7530U | 79 |
HP 245 G10 | Ryzen 5 7530U | 81 |
ENVY x360 13-bf | Core i7-1250U | 93 |
IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U | 113 |
書き出しはまずまずの速さ。やはりInspiron 14 5435とほぼ同タイムでした。
FHD動画の簡単な編集であれば問題なくこなせそうですが、ちょっと凝った編集になってくるとグラボを搭載したPCが必要になってくると思います。
◆ゲーム
定番のファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ(2021年発売)でベンチマークをとってみました。
1920×1080 標準品質(ノートPC)という条件でスコアは75402、「普通」という結果フレームレートは37fpsでした。
機種 | CPU | グラフィックス | スコア |
Victus 16 | Ryzen 7 6800H | RTX 3050 Ti | 16379 |
Yoga 770 | Ryzen 7 6800U | Radeon 680M | 8420 |
IdeaPad Slim 5i OLED | Core i5-13500H | Intel Iris Xe | 7939 |
HP 245 G10 | Ryzen 5 7530U | AMD Radeon | 5402 |
Inspiron 14 5435 | Ryzen 5 7530U | AMD Radeon | 5243 |
グラボ非搭載の本機ではゲームは厳しいと言えます。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
○Web会議
〇画像編集
△動画編集
×ゲーム
という快適度になります。
良い: ミドルレンジとして期待どおりの性能
良い: 普段使いの快適度は上位
微妙: クリエイティブワークはあまり得意じゃない
キーボードの配列と打鍵感
キーピッチ(キーの間隔)は18.7mm、キーストローク(深さ)は1.6mmです
ストローク深めのキーボードで打鍵感もまずまず良いです。
配列はHPでお馴染みのこれ。
右に一列、Home、PgUp、PgDn、Endが並んでおり、Enterキーが右端にありません。
慣れないとタイプミスしやすい配列です。筆者はBackspaceを押し間違えします。
ただHome、PgUp、PgDn、EndはWebページのスクロールには便利なキーですし、慣れるとこれはこれでアリなのかなとも思います。
もう1つ気になったのはタッチパッド。
ボディが樹脂製で剛性が少し足りないので、タッチパッドをタップするとカタカタと音が鳴るのが気になりました。
微妙: クセのあるキー配列
悪い: タッチパッドをタップ時にカタカタする
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが1つとUSB-Aが2つです。
UBS-CはUSB3.1 Gen 1で転送速度は5Gbpsです。
PD対応(電源供給)は非対応。モバイルバッテリーから充電できないので注意してください。
あとはHDMIとヘッドフォンジャックです。
SDカードスロットがないのも含め、インターフェイスは平均以下です。せめてPD対応のUSB-Cになっていればと思います。
悪い: タイプC充電できない
バッテリー、ファン音、熱など
バッテリー容量は41Whです。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
ThinkPad X13 Gen 4 | 5.1時間 |
IdeaPad Slim 5i OLED | 6.0時間 |
HP 245 G10 | 8.0時間 |
Inspiron 14 5435 | 8.5時間 |
ENVY x360 13-bf | 10.0時間 |
結果は約8.0時間。平均~少し長めのバッテリーライフです。
負荷時には「サー」というファン音がします。大きさは47デシベルで少しうるさいです。
この手のノートPCなら38~43デシベルくらいが一般的なので、本機は少し音が大きいと思います。
あと何もしてなくてもバックグラウンドでタスクを処理しているときにファンが回りやすいのも気になりました。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
バッテリー、熱、音 | ☆☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆☆ |
悪い点
・16:9ディスプレイ
・Webカメラの写りは平均以下
・タッチパッドがカタカタする
・USB-Cポートから充電できない
・負荷時のファン音が少し大きい
良い点
・1.38kgで比較的軽い
・キーストロークは深め
・普段使いの性能は上位
Ryzen 5+メモリ16GBで8.0万という安さは魅力ですが、欠点も多いPCです。
欠点をどのくらい許容できるかは人それぞれなので、最終的な判断はご自身にお任せします。
16:9ディスプレイは人によっては気にならないと思いますし、Webカメラはほとんど使わないから関係ないという人もいるでしょう。
ただ公正なレビューという立場で言わせてもらうなら、14型ノートの中で本機が一番手だと主張するのは難しいです。
冒頭で述べたように、6~8万の価格帯には強力なライバルがいるからです。
HP 245 G10 | DELL Inspiron 14 5435 | |
ボディがアルミ合金 | × | 〇 |
画面の縦横比16:10 または3:2 | × | 〇 |
IPSディスプレイ | 〇 | 〇 |
Webカメラ FHD (1080p) | × | 〇 |
プライバシーシャッターあり | 〇 | 〇 |
USB-Cあり、USB2.0なし | 〇 | × |
タイプC充電可能 | × | 〇 |
フルサイズSDカード | × | 〇 |
顔認証 or 指紋認証 | 〇 | 〇 |
重量 | 1.38kg | 1.56kg |
価格(Ryzen 5 メモリ16GB) | 8.0万 | 6.9万~8.7万 |
例えばDELL Inspiron 14 5435は
・ボディがアルミ合金
・16:10ディスプレイ
・WebカメラはFHD
・タイプC充電可能
と多くの条件で本機を上回ります。
7月31日時点ではInspiron 14 5435の方が少し価格が高いですが、ある時期では6万円台で買えたこともありました。両者の価格差が小さい場合はInspironを買いたいところです。
HP 245 G10の良さは
・Inspiron 14よりも軽い
という点。
価格差が広がってInspironが高くなってるときは、本機を買う理由になるでしょう。