「聖の青春」という村山聖さんの映画が公開されたというニュースを見て、ふと昔の村山聖さんの棋譜を見直してみることにしました。
数多い名局の中でぼくが一番思い出に残っているのは1998年のNHK杯準決勝、島朗八段との対局です。
この対局の解説者は羽生さんでした。
村山さんが攻めて、島さんが受ける展開で終盤へ。
図は先手番。
先手は優勢ですが、うまい寄せが見つかるか・・
しかもNHK杯なので持ち時間が少ない将棋です。
筋は24歩と突き出す手ですが、同金と取られると、後手は角が守備にも効いていて、なかなか難しそうです。
ここで村山さんは解説の羽生さんも予想だにしない一手を指しました。
それが25桂です。
24歩からの25桂は、とても見つけにくい手順だと思います。
せっかく相手玉を直撃している2筋の飛車道を遮る25桂は盲点になりやすいですし、さらに直前の24歩という一手が飛車先を通すという意味合いがあるので余計に盲点になりやすいです。
24歩からの流れを重視するなら、25桂という手はまず浮かんでこないでしょう。
25桂に34金と逃げるのは23銀と打って即詰。
23金と逃げるのも32銀で寄り形。
よって32金と逃げましたが、そこで15香と歩を補充し、33歩と打ち込みます。
はい。これではっきりしましたね。
同桂は13銀、23玉、32角成なので、同銀と取りましたが32角成以下の詰みとなりました。
局後に羽生さんがこの25桂に感嘆していたのが印象的でした。羽生さんが特定の一手を褒めるってことはとてもめずらしいことです。
この対局に勝利した村山さんは決勝で羽生さんと対戦することになったのですが、結果終盤にミスが出て敗れてしまいます。
決勝戦の棋譜は村山さんとしては残念な棋譜だと思ったので、今回は会心譜である準決勝の棋譜を紹介しました。