電王戦の第一局はPonanzaの圧勝でした。
ここまで差があると、もはやエンターテイメントとして成立しないなあと感じました。
それぐらいコンピューターと人間の差は広がっています。
試合はPonanzaの38金から始まりました。
戦型は相掛かり。後手の佐藤名人が横歩を取って一歩得しますが、先手のPonanzaは陣形を優先。
上図は後手の佐藤名人が75歩から仕掛けた場面です。
立ち遅れている後手からわざわざ仕掛けた・・この構想自体がどうだったのか、疑問が残りますが、それ以上にここからのPonanzaの受けが見事でした。
佐藤名人は教科書に書いてある端攻め。
ここでPonanzaは65歩!
好手です。
75銀なら76歩、86歩、75歩、87歩成、85歩、同飛、76銀で先手優勢。同銀も73桂や55角という手があり、せっかくの端攻めがぼやけてしまいます。
実戦は65歩、73銀の交換を入れてから、97香と取りました。
そして後手が98角と打ち、Ponanzaが29飛と飛車を1つ引いて受けた場面。
ここでアマチュアはどうしても87角成の8筋突破が気になるところです。
アマチュア初段レベルだと、この局面は即飛車が成れて後手優勢と勘違いしてしまう人もいるでしょう。
しかしそれは間違い。87角成のときに66角と打つような手があって、そこまで効果がありません。29の飛車がよく効いていることに注意しましょう。
佐藤名人は87角成が意外に効果がないので何とかもう一工夫加えたいと思ったのではないかと推察します。
普通であれば、87角成の前に96歩と香取りに叩く手が手筋となります。
これを香で取れば今度こそ87角成が厳しい一手になります。
しかし96香には76角!という好手があります。
97歩成は同桂と取って、後は88金で98の角を捕獲してしまえば先手優勢です。
単に87角成がダメ、1つ前に96歩を入れるのもダメ。
そこで佐藤名人は88歩という手をひねり出しました。
88歩も狙いとしては96歩と似ていて、取ればそこで87角成。
しかし結果的にはこれが敗着でした。
Ponanzaは88歩を無視して74歩!
突き捨てを入れておいて、後で66角(飛車当たり)という手がとても味の良い一手になりました。
以下は後手に勝ち目はなさそうです。
十数手後の55馬を見て、名人は投了。
84歩、93飛、94香と飛車を捕獲してしまう筋が厳しく、投了やむなしです。
振り返ってみて、Ponanzaの65歩と74歩の2つの突き捨てが印象に残りました。
どちらも絶妙のタイミングでした。
派手さはありませんが、佐藤名人の攻めを無力化することに成功し、後の逆襲へとつながる素晴らしい手だったと思います。