先日の王将戦挑決リーグでの糸谷戦で見せた藤井三冠の指し回しは素晴らしかったと思います。
後からAIで解析したみましたが、AIが示す最善手との一致率が恐ろしいことになっていました。
藤井三冠の指し手 | AI最善手 | 評価値 | AI次善手 | 評価値 |
65桂 | 65桂 | -146 | 84飛 | -124 |
81飛 | 81飛 | -156 | 77桂成 | 1 |
62同玉 | 62同玉 | -163 | - | |
63銀 | 63銀 | -107 | 44銀 | -61 |
44銀 | 44銀 | -328 | 42金 | -236 |
27角 | 27角 | -617 | 45銀打 | -413 |
36角成 | 36角成 | -542 | 86歩 | -301 |
65同歩 | 65同歩 | -565 | 86歩 | -481 |
54同歩 | 54同銀 | -827 | 54同歩 | -730 |
53玉 | 53玉 | -773 | 52玉 | -647 |
63同玉 | 63同玉 | -886 | - | |
37馬 | 37馬 | -900 | 61飛 | -197 |
19馬 | 19馬 | -1014 | 82馬 | -335 |
55香 | 55香 | -1154 | 62銀 | -1123 |
62銀 | 55同香 | -1192 | 62銀 | -1137 |
56香 | 56香 | -2234 | 86歩 | -1491 |
64桂 | 64桂 | -2244 | 84角 | -1766 |
37馬 | 37馬 | -2906 | 84角 | -1897 |
76桂 | 76桂 | -3438 | 56桂 | -3358 |
※評価値はマイナスになるほど後手(藤井)が優勢。
36手目、藤井三冠が65桂と跳ねた場面から72手目の76桂で大勢が決した局面までの一致率はなんと89%!
藤井三冠の指した手は19手でそのうち17手はAIが示す最善手でした。
途中、「取る一手」の指し手が2回ほどあるのでそれをカウントしないとしても信じられない一致率だと言えます。
これが終盤の詰みの局面ならわかりますが、戦いが始まった中盤から大勢が決まる終盤までの一致率ですから、驚くしかありません。ちなみに76桂以降の手もカウントするとさらに一致率は上昇します。
そして最善手を外した2手も、きっちりAIの次善手を指しているというのもすごい点です。
実際に将棋内容を人間(アマチュア三段)の目から見ても、すごいとしか言いようがありません。糸谷八段の攻めをきっちり受け止め、相手に緩手が出たらそこで手抜いてカウンター。最後は余裕を持って一手勝ちを決めており、A級棋士相手に格の違いを見せつけた将棋でした。
解析条件は
- 将棋ソフト 水匠4改 (2021年9月時点の最新版)
- 毎回3億手読ませたときの最善手と次善手、そして評価値
です。
もっと読みを深くすれば、違う結果になる可能性がありますのでその点はご了承ください。
将棋の中盤戦は選択肢が多いため、一流のプロ棋士でも一致率は60%ちょいといった印象。きちんと統計ととったわけではないので、ちょっと適当なことを言っていますが、でもたぶんそれぐらいかと思います。実際三冠を決めた豊島戦の中盤が63%でした。
中盤がわかりやすい将棋になって70%とか、75%くらい行くときもあるかなという感じ。糸谷戦は自玉の薄い将棋で決してイージーな戦いではなかったと思うのですが、そんな将棋の中盤~終盤で89%の一致率、外した2手もほぼ最善に近い次善手です。糸谷さんからしてみたら「無理ゲー」と言っても過言ではないかもしれません。
藤井三冠とて毎回このような完璧な指し回しができるわけではありませんが、本局はその才能がフルに発揮された将棋でした。