藤井聡太二冠がまた歴史的な一手を指したというニュースはYahooトップでも大きくとりあげられてましたね。
先手(画面下側)が藤井二冠。後手が松尾八段。
この局面は後手が44に居た角を88角成と成りこんだところ。
角が移動したことにより、飛車同士がぶつかっていることがわかります。
当然次の一手は相手の飛車を取る84飛
そうだれもが思っていました。
しかし藤井二冠は長考し別の手を指しました。
それがただ捨ての41銀!
解説のプロ棋士が「神の一手」と言っていた手で、AIが最善手として示していた手でした。
この41銀、「この場面ですごい手があります、さあどんな一手でしょう?」と言われると、アマチュア三段クラスでも発見できる手なのですが、実戦ではアマチュアどころか、一流のプロ棋士でも絶対に思いつかないという手です。
本当におそろしい一手です。
その意味を簡単に言うと、
相手玉の退路を断って、詰めろをかけやすくする手
です。
詰めろ=放置すれば王様が次に詰んでしまう状態
将棋の終盤戦はこの「詰めろ」という状態にいかに速くもっていくかのスピード勝負になることが多く、本局もまさにそれでした。
つまり銀をタダで捨てて、一手速く王様に迫る手が41銀の意味ということになります。
この41銀を同玉と取ると、32金と打ち、以下52玉、84飛となります。
こうなると、32金が右側を制圧していて、さらに左は84飛。完全に挟撃態勢になっていて、詰めろがかけやすい状態です。これはダメなので、松尾八段は41銀に同金と取りました。
そこで84飛。
41銀、同金という交換が入ったことで、右側に壁ができ、詰めろがけやすくなっています。
41銀を入れないで、単に84飛も十分アリな手ですが、「次に詰めろをかける手がよくわからなかった」と藤井二冠が局後に語っていたように、局面の簡略化という意味ではやはり藤井二冠が指した41銀が最善だったように思います。
実戦は41銀、同金、84飛、78馬、75桂と進みました。
最後の75桂が、次63桂成以下の詰めろになっています。
後手もいくつか粘る手が残されていますが、どうやっても藤井二冠の勝ちは揺るがないようです。
藤井二冠の伝説に新たなページが加わった一局でした。
これまでも藤井二冠のすごい手を何度かとりあげていますが、
・77同飛成
・41銀
この2つは別格ですね。
ちなみに羽生さんの伝説の52銀を思い出した人がいるかもしれませんが、アマチュア三段のぼくからみれば、圧倒的に41銀の方が発見しにくい手だと思います。
別に羽生さんの手を陥れるつもりはないのですが、52銀は解説の米長さんのオーバーリアクションのせいで過大評価されています。
41銀 > 52銀
ぼくの中では大きな差があります。
どちらもリアルタイムで見ました。
52銀は1989年。
52の地点に駒を捨てたいなあと思っていたら羽生さんが52銀を指して米長さんが絶叫したのをよく覚えています。52に何か打つっていうのはちょっと将棋をかじった人なら第一感としてありますね。
41銀は2021年。
全く思いもつかない手で、AI候補手として出てきて初めて意味がわかり、そしてそれを実際に指せる人間が居たことに震えました。