藤井四段が梶浦四段を破り24連勝を飾った試合は、非常に見応えのある将棋でした。
藤井四段がこれだけ注目されているわけですから、対戦相手も気合いが入ります。「よし、おれが止めて名前を売ってやる」という人がいても全くおかしくありません。
梶浦四段は21歳の新鋭。先手を持った梶浦四段は藤井四段の得意な角換わりで堂々勝負を挑みました。
図は28の飛車を48へ移動させた局面。
後手はここで19角成と香を取るのは、11角成と玉に近い香を取られて不利。
また37角成としても68飛と逃げられ、次に11角成を見せられて苦しい。
そこで藤井四段は65歩と指しました。
相手の角筋を変える意図があります。
ここで先手には22銀!という強手があったようです。以下同金、同角成、同玉、46飛という展開。これならまだ先手がやれたはず。
しかしこの手は相当見つけづらい手(藤井四段は発見していた)。
実戦では75角と逃げました。
以下37角成、68飛、26馬と手順に53角成を防ぎつつ、25の桂馬を捕獲。
後手が優勢となりました。
そこから数手進んだ局面。
先手側から見て、盤面右半分は後手に制圧されたので、左サイドへ戦力を展開させています。
先手は6筋突破が目標。飛車を成り込めばまだ勝負はわかりません。
しかし藤井四段の指し手はそんな先手の構想を打ち砕く手でした。
63桂! 66角 55金!
63桂から55金。
なんということでしょう。あっという間に6筋、5筋を逆に制圧してしまいました。
55金に対し、77角と逃げるような手では66歩!がうまい手で、
次に75歩が厳しく、これは勝ち目がありません。
そこで梶浦四段も、55金に64歩と反撃しますが、59馬と飛車取り。
以下77角、68馬、同金、29飛と進みます。
数手進み、局面は後手が優位を拡大したところ。
先手は47角と、飛と金の両取りをかけました。
藤井四段は構わず、66歩!
両取り逃げるべからずってやつですね。
以下、29角、67歩成、65角、66歩!
玉頭の急所に「と金」を作って、再度66歩と支えておけば完全に寄り形です。
こういうのは、アマチュアも勉強しがいのある手順ですね。
以下、梶浦四段も粘りましたが、藤井四段は危なげなく勝利しました。
振り返ってみて、この将棋は両者ともミスらしいミスがない素晴らしい将棋だったと思います。
中盤以降はかなりハードに打ち合いました。
しかもただパンチを振り回すのではなく、カウンター、そのまたカウンターというような高度な打ち合い。
アマチュアなら一発でKOされるような、鋭いパンチの応酬を見せてくれました。
これぞプロという将棋だったと思います。
そんな中でも、藤井四段の方が一枚上手でした。
いや、すごいのはもう十分わかってましたが、この将棋で改めてその強さを痛感しました。
特に63桂~55金は、藤井四段の強さが一番よく出た手順だっと思います。
本局の前の数局はらしくないミスも出ていたので、少し心配をしていましたが、全くの杞憂でしたね。