今回はHP OmniBook Ultra Flip 14-fhのレビューです【貸出機材提供:日本HP】
OmniBook Ultra Flip 14-fhは2024年10月発売のノートPC。
- 性能良し(CPUはCore Ultra 7 258V)
- 360度回転パネル、タッチ対応、ペン対応
- ディスプレイは14インチ2.8Kの有機EL
- 静かで発熱少なめ、長時間バッテリー
という特徴があります。
OmniBookはHP Spectre x360の後継機と言える存在。HPの最上位機種だけあって非常に完成度高く仕上がってます。
まずはスペックからおさらいしておきましょう。
レビュー機のスペック
・OS: Windows 11 Home 64bit
・CPU: Core Ultra 7 258V
・メモリ: 32GB オンボード
・内蔵グラフィックス: Intel Arc 140V
・SSD: 1TB
・ディスプレイ: 14インチ 2880x1800、光沢、OLED
・USBポート: Thunderbolt 4 x2、USB-C x1
・インターフェイス: ヘッドフォン
・Webカメラ: 4K (900万画素)、IR、プライバシーシャッター
・顔認証あり、指紋認証あり
・Wi-Fi 7 対応
・アクティブペン付属
・重量: 1.34kg
レビュー機はCore Ultra 7 258Vにメモリ32GBのパフォーマンスモデルです。12月20日時点の価格は26.0万円(税込、送料込)です。
2024年のハイエンド機としては相場どおり。動画編集や軽めのゲームにも使える万能型のPCです。
ちなみに下位モデルはCore Ultra 5 226V、メモリ16GB、ペン別売りで20.0万円となります。
※価格の最新情報はHPのオンラインストアで確認してください。
デザイン、ディスプレイ
筐体カラーは暗めのグレー
暗い場所では黒に近く、マットな色合いです。
なかなか高級感があります。
360度回転パネルなので、タブレットとして使うことも可能です。
付属のペンの書き心地も良好です。
重さは実測で1.32kg
まずまずの軽さで持ち歩きも可能です。
ディスプレイは
・有機EL
・2880×1800
・縦横比16:10
・タッチ対応、ペン対応
・光沢、有機EL
・輝度(明るさ) 350nit
・色域 DCI-P3 100% (sRGBカバー率に換算すると133%)
です。
発色はかなり良いです。
DELL Inspiron 14 5435 (6万円台)と比較すると以下のとおり
色の鮮やかさ、コントラストが断然良いです。
ただ、光沢タイプなので映り込みがあります。ここは好みが分かれるところです。
良い: 上品な色合い
良い: 有機EL(OLED)で色が鮮やか
微妙: 光沢タイプなので映り込みはある
Webカメラ
Webカメラの解像度は900万画素。顔認証に対応しています。
高画素ですが、パッと見た印象では200万画素のカメラとそんなに差はありません。
むしろ、本機の方がノイズが目立ちます。カメラは画素数だけ上げてもあまり意味がないように思えます。
悪い: カメラのノイズ
ベンチマーク
CPUはインテルのCore Ultra 7 258V
2024年後期のインテルのエースです。
PassMarkのベンチマークテストを実施したところ、
シングルスレッド: 4347
マルチスレッド: 20092
という結果でした。
マルチスレッドのスコアは低いですが、シングルスレッドのスコアは高いです。
マルチスレッドの性能は、動画の書き出しや3DCGのレンダリングといった作業に効きます。クリエイティブワークには必要な性能です。
一方、シングルスレッドの性能は1つ1つの細かい反応速度に効いてくるのでこちらも重要です。
実際のパフォーマンスにどのように寄与するかは以下のテスト結果を見てください。
◆PCMark 10
PCMark 10はリアルなアプリを使用したベンチマークで、一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。その結果は以下のとおりです。
ここで注目したのはデジタルコンテンツ制作のスコア
CPU | GPU | Digital Contents Creation | |
Yoga Pro 7 Gen 9 | Ryzen AI 9 365 | Radeon 880M | 10677 |
Yoga Slim 7i Aura Edition | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 9378 |
OmniBook Flip 14-fh | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 9222 |
IdeaPad Pro 5i Gen 9 | Core Ultra 7 155H | Intel Arc | 9132 |
Yoga 7 2-in-1 Gen9 | Ryzen 7 8840HS | Radeon 780M | 9036 |
Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 7 8840U | Radeon 780M | 8153 |
同じCore Ultra 7 258VのYoga Slim 7iとほぼ同じスコアで、1世代前のRyzenやインテルよりも上に位置しています。
クリエイティブワーク全般で高い性能であることがわかります。
◆AIによる画像処理 (Photoshop)
Photoshopのノイズ除去はフォトグラファーがよく使うPhotoshopの新機能です。この処理にかかる時間を計測しました。
機種 | CPU | グラフィックス | タイム (秒) |
OmniBook Flip 14-fh | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 36 |
Yoga Pro 7 Gen 9 | Ryzen AI 9 365 | Radeon 880M | 38 |
Yoga Slim 7i Aura Edition | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 55 |
Yoga 7 2-in1 Gen9 | Ryzen 7 8840HS | Radeon 780M | 58 |
IdeaPad Pro 5i Gen9 | Core Ultra 7 155H | Intel Arc | 103 |
Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 7 8840U | Radeon 780M | 111 |
こちらは同世代の薄型ノートでは最速です。
ちなみにこの作業はまだNPUに対応しておらず、GPUで対応する形になっています。本機の内蔵GPUはIntel Arc 140Vです。
◆Davinci Resolveで動画編集
動画編集ソフトのDavinci Resolveで180秒の動画をyoutube用に書き出すのにかかった時間を計測してみました。
機種 | CPU | タイム (秒) |
Yoga Slim 7i A.E | Core Ultra 7 258V | 24 |
OmniBook Flip 14-fh | Core Ultra 7 258V | 26 |
Yoga Pro 7 Gen 9 | Ryzen AI 9 365 | 26 |
IdeaPad Pro 5i Gen9 | Core Ultra 7 155H | 39 |
Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 7 8840U | 39 |
Yoga 7 2-in1 Gen9 | Ryzen 7 8840HS | 49 |
こちらも2番目の速さで優秀です。
書き出しはマルチスレッド性能に依存するのが一般的。本機はそのマルチスレッド性能があまり高くないのでこの作業は苦戦すると思ってただけに予想外でした。
これは
・内蔵GPUの性能アップ
・Davinci側の進化
の2つの理由があり、後者の方が大きいです。
書き出し時に内蔵GPUのアシストが得られるようになったので、その恩恵を受けた結果です。
◆ゲーム性能
中量級ゲームのFF 14 黄金のレガシー(2024年発売)の結果は以下のとおり。
機種 | CPU | グラフィックス | fps |
Yoga Slim 7i Aura Edition | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 61fps |
OmniBook Flip 14-fh | Core Ultra 7 258V | Intel Arc 140V | 58fps |
IdeaPad Pro 5i Gen9 | Core Ultra 7 155H | Intel Arc | 58fps |
Yoga Pro 7 Gen 9 | Ryzen AI 9 365 | Radeon 880M | 55fps |
Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 7 8840U | Radeon 780M | 42fps |
Yoga 7 2-in-1 Gen9 | Ryzen 7 8840HS | Radeon 780M | 40fps |
1920×1080 標準品質(ノートPC)という条件でスコアは8364、「快適」という結果で平均フレームレートは58fpsでした。
Intel Arc 140Vのグラフィック性能は高いです。
3DMark FireStrikeのベンチマークは以下のとおり
スコアは8920で、このテストでは少し下でした。
ゲームによって得手不得手が出る可能性はあります。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
○画像編集
○動画編集
△ゲーム
という快適度になります。
良い: クリエイティブワーク全般とても優秀
良い: 中量級のゲームもある程度楽しめる
キーボードの配列と打鍵感
キーピッチ(キーの間隔)は19mm、キーストローク(深さ)は1.2mmです。
浅めのストロークですが、クリック感があるので打鍵感は良いです。
Enterキーの形状もきれいで見た目も良いです。
タッチパッドも広く操作性良好です。
1つ気になったのはPrtSc(プリントスクリーン)のキーがないこと。本機でプリントスクリーンを実行するときは、「Windows」+「Shift」+「S」でおこないます。
あともう1つは右上の電源ボタン
ここに配置したのは一応OKだとしても、押し間違えをなくすために色を変えたのはどうだったでしょうか。
ここだけ安っぽく写ります。
もっと高級感のある色(シルバーとか)にするか、もしくはここに電源ボタンを配置することも考え直した方が良かったのではと思います。
良い: キーの形状
微妙: プリントスクリーンキーがない
悪い: 電源ボタンが安っぽく見える
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが3つ
そのうち2つがThunderbolt 4です
・転送速度 40Gbps
・PD対応(モバイルバッテリーから充電OK)
・映像出力可能
あとはヘッドフォンジャックのみ。
HDMIやSDカードスロットはありません。
デジカメ用のSDカードスロットがないのは残念です。クリエイター向けのPCとしては、需要は大きいと思います。
良い: USB-Cが3つ
悪い: SDカードスロットなし
バッテリー、駆動音、熱など
バッテリー容量は64Whです。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX (350nit)
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約12時間。
OmniBook Flip 14-fh | 12.0時間 |
Yoga Slim 7i Aura Ediion | 10.0時間 |
Yoga Pro 7 Gen 9 | 9.0時間 |
ThinkPad X13 Gen 5 | 8.0時間 |
IdeaPad Pro 5i Gen9 | 7.0時間 |
Pavilion Aero 13-bg | 6.0時間 |
優秀なバッテリーライフです。
ファン音(駆動音)も静かです。
負荷時の音圧は32デシベルでした。ファン音というよりも環境音でファンからの音はほぼ無音に近いです。
薄型ノートの平均は35~40デシベル
ゲーミングPCの平均は50デシベル
本機はとても静かで、発熱も低く安定しています。
長時間バッテリー
駆動音が静か
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆☆ |
悪い点
・Webカメラは無駄に高画素
・SDカードスロットなし、HDMIなし
・キーボード面の電源ボタン
良い点
・画像編集、動画編集などが快適
・軽めのゲームも楽しめる
・色鮮やかな2.8K OLED
・キー配列がきれい
・音が静か、発熱も少ない
大きな弱点がなく、とても完成度が高いです。
性能面もCore Ultra 7 258Vが予想以上に良いです。動画編集やイラスト制作は快適ですし、軽めのゲームも楽しめます。
加えて、静かで発熱が少ないのが素晴らしいです。2024年前期までのPCとは別次元の電力効率です。
Core Ultra 7 258V、メモリ32GBで26.0万円。
スペックを抑えると20.0万まで安くなりますが、CPU性能以上に内蔵グラフィックスの性能まで下がります。
個人的にはレビュー機どおりの構成がおすすめです。
2-in-1 PCで最高を求めるならこれで決まりでしょう。