今回はENVY x360 13-ay (AMD)のレビューです【貸出機材提供:株式会社日本HP】
HP ENVY x360 13-ay (AMD)は2021年発売のモバイルノートです。
- 13.3インチ1.25kg
- CPUはAMD Ryzen 5000シリーズ
- 回転式の2-in-1
- 明るいディスプレイ、タッチ対応
という特徴をもっています。
ENVYシリーズはHPのパソコンでも上から2番目にランクされる高級志向のモデル。価格は10.3万からとまずまずのコスパです。
見た目がかっこ良くて、性能が良く、そして価格も抑えめのHP ENVY x360 13ですが、欠点はないのでしょうか?
実機を使って厳しくチェックしてみました。
レビュー機のスペック
・OS: Windows 11 Home
・CPU:Ryzen 7 5800U
・メモリ:16GB (8GB x2)
・SSD: 1TB
・ディスプレイ:13.3型 (1920×1080) 、光沢、IPS
・USB: USB-C x1、USB-A x2
・インターフェイス:microSD、ヘッドフォン
・Wi-Fi: Wi-Fi 6対応
・指紋認証あり、顔認証なし
・重量: 1.25kg
OSは最新のWindows 11が搭載されています。
レビュー機はRyzen 7 + メモリ16GBのパフォーマンスモデルG2です。
3月20日時点の価格は13.2万円(税込、送料込)
性能と軽さを考えれば十分納得プライスだと思います。
CPUはAMDのRyzen 7 5800U。いわゆる「Zen 3」と言われるプロセッサで、同じ5000番台のRyzen 7 5700Uよりも性能がアップしたモデルが搭載されています。
SSD容量が1TBあるのも大きいです。他社ではRyzen 7との組み合わせでSSD512GBのケースが多いですが、HPは1TBという大容量を用意してくれています。
またオプションでMicrosoft Officeを付けることもできます。
※価格は2022年3月20日現在のものです。
※最新情報はHPの公式ストアで確認してください。
デザイン、ディスプレイ
筐体カラーはナイトフォールブラック。
ほぼ黒ですが、明るい場所で見ると若干ブラウンが入ってるように感じます。
とてもシックで高級感があります。指紋も目立ちません。
天板はアルミニウム合金を使用しており、hpのロゴが入っています。
ヒンジの背面には「ENVY」の印字。細部まで凝ったデザインになっています。
重量は1.25kg
13.3インチノートとしてはやや重めです。
その分作りはしっかりしており、片手で持っても軋んだり歪んだりしません。
ディスプレイは360度回転式。変形してタブレットとしても使用できますが、1.25kgとちょっと重いので普通のノートパソコンとして使うことが多いのかなと予想します。
ディスプレイは
・FHD (1920×1080)
・光沢
・IPS
・タッチ対応
という仕様。
縦横比は流行りの16:10ではなく16:9です。
16:10の方が縦に長くて使いやすいという声が多いので、これはちょっと残念な点です。
光沢タイプなので映り込みがあります。
上の写真でも室内のカーテンが映り込んでいることがわかります。
しかし色彩やコントラストはとても良いです。
・輝度(明るさ) 400nit
・色域 sRGBカバー率 100%
非常に明るく、また色再現性も高いです。
良い: 高級感がある
良い: ディスプレイは明るく色味も良い
微妙: 縦横比は16:9
微妙: 1.25kgは持ち歩きに便利とは言えない
指紋認証、顔認証、セキュリティ
Webカメラはワンタッチで機能をオフにできますが、顔認証は付いていません。
指紋認証装置はキーボードに付いています。
ベンチマーク
CPUはAMD Ryzen 7 5800U、8コア16スレッドです。
PassMarkのベンチマークテストを実施したところ、19000というスコアでした。
PassMark社が発表している平均値は、
Ryzen 3 5400U: 18894
となっています。
レビュー機はほぼ平均値。期待どおりのパフォーマンスでした。
スコアはRyzen 7 5700UやCore i7-1165G7よりも上で優秀です。
ちなみに電源から外してバッテリー駆動時のスコアもとってみると16869。低下率は11%と許容範囲内でした。
◆リアルなアプリの快適度
PCMark10は一般的な利用、ビジネス利用、デジタルコンテンツ制作の3種類の作業の快適さを計測するベンチマークソフトです。
結果はすべての項目で目安となるスコアを上回りました。
Essentials(一般的な利用) 7746 (目安4100)
Productivity(ビジネス利用)9478 (目安4500)
Digital Contents Creation(デジタルコンテンツ制作) 5846 (目安3450)
ただEssentials(一般的な利用)の中でアプリ起動のスコアが極端に低いです。
HP Pavilion Aero 13-beと比較してみるとそれがよくわかります。
Pavilion Aero 13-be | ENVY x360 13-ay | ||
Ryzen 7 5800U | Ryzen 7 5800U | スコア差 | |
アプリ起動 | 9201 | 6079 | -51.4% |
ビデオ会議 | 8165 | 8504 | 4.0% |
Webブラウジング | 8338 | 8993 | 7.3% |
表計算 | 10992 | 11688 | 6.0% |
文章作成 | 6908 | 7686 | 10.1% |
画像編集 | 7154 | 8420 | 15.0% |
レンダリング | 4494 | 5869 | 23.4% |
動画編集 | 3432 | 4043 | 15.1% |
CPUは同じRyzen 7 5800U。アプリ起動のスコアだけ大きく負けていますが、それ以外の項目では全部Pavilionより上のスコアを出せています。何度かテストしても同様の結果でした。
理由は不明です。実際に使ってみてアプリに起動が遅いと感じることはなかったので気にする必要はないかもしれません。
◆PhotoshopでRAW現像
PhotoshopでRAW現像10枚にかかる時間を計測してみました
その結果が下の表になります。
CPU | メモリ | タイム(秒) |
Core i7-1165G7 | 8GBx2 | 8.7 |
Core i5-1135G7 | 4GBx2 | 10.6 |
Ryzen 7 5800H | 8GBx2 | 12.7 |
Ryzen 7 5800U | 8GBx2 | 12.8 |
Ryzen 7 5700U | 8GBx2 | 18.2 |
RyzenはPhotoshopのRAW現像が苦手なようでインテルよりも遅めですが、Ryzenの中では速い方でした。
RAW現像以外に「空の選択」や「放射ぼかし」などの作業時間も計測してみました。
空の選択 (秒) | 放射ぼかし(秒) | |
Core i7-11800H | 2.7 | 1.8 |
Ryzen 7 5800H | 3.1 | 1.6 |
Core i7-1165G7 | 3.6 | 2.7 |
Ryzen 7 5800U | 3.6 | 1.9 |
Ryzen 7 5700U | 4.2 | 2.1 |
こちらは優秀なタイム。Ryzen 7 5800Hに匹敵するくらいのタイムで出ています。
◆Davinci Resolveで動画編集
180秒のFHD動画(30fps)の書き出しにかかった時間を計測したかったのですが、なぜかDavinci Resolveが起動しないというトラブルに見舞われてしまいました。
今回は参考データとしてPavilion Aero 13-be(同じRyzen 7 5800U)のタイムを掲載しておきます。
CPU | GPU | タイム(秒) |
Core i7-11800H | RTX 3050 | 65.9 |
Ryzen 7 5800H | AMD Radeon | 79.4 |
Ryzen 7 5800U | AMD Radeon | 92.6 |
Ryzen 7 5700U | AMD Radeon | 99.3 |
Pavilionのタイムは92.6秒。本機もおそらくこれぐらいの速さでしょう。待てなくはない時間ですが、クリエイター向けPCとは差があります。
軽めの編集なら大丈夫かと思いますが、エフェクト多めの編集や、4K動画になってくるとかなり苦しいはずです。
◆軽めのゲーム
最後にファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ(2021年発売)でベンチマークをとってみました。
1920×1080 標準品質(ノートPC)という条件でスコアは4643、「普通」という結果で平均フレームレートは30 fpsでした。
Inspiron 15 AMD | Ryzen 7 5700U | AMD Radeon | 4382 |
dynabook PZ/HU | Core i7-1195G7 | Intel Iris Xe | 4467 |
ENVY x360 13 | Ryzen 7 5800U | AMD Radeon | 4643 |
ThinkPad X13 Gen 2 | Core i7-1165G7 | Intel Iris Xe | 6688 |
DAIV 5P | Core i7-11800H | RTX 3050 | 18971 |
本機は外部グラフィックスを搭載していないのでゲームは厳しいと思います。
以上のことをわかりやすくまとめると
○ネット、動画鑑賞
○オフィス系ソフトで事務作業
○Web会議
〇画像編集(RAW現像)
△動画編集
×ゲーム
という目安になります。
良い: 8コア16スレッドのCPUで守備範囲が広い
良い: Photoshopもまずまず快適
悪い: 動画編集やゲームになるとちょっと厳しい
キーボードの配列と打鍵感
キーの配列は、右端がEnterじゃない独特の配列です。
市場に登場してから数年は経つこの配列。もう慣れたという人もいれば、いやいややっぱりこれは無理という人もいるでしょう。
実際使ってみると、そこまで悪くはないです。ただ最初はどうしてもEnterキーやBackspaceキーなどのタイプミスが頻出します。
キーピッチは19.0mm、キーストロークは1.3mmです。
全体の打鍵感はまずまずです。
あとタッチパッドも滑らかで操作性が良いです。
写真を撮り忘れましたがバックライトも付いています。
良い: キーの打鍵感とタッチパッドはまずまず
微妙: キーの配列
インターフェイス
USBポートはUSB-Cが1つとUSB-Aが2つです。
USB-CはThunderbolt未対応ですが、Power Delivery対応なので、専用ACアダプタを使わずともモバイルバッテリーでの充電が可能です。また映像出力にも対応しています
あとはmicroSDカードスロットとヘッドフォンジャックです。
HDMI端子がないのは残念な点です。
前述したとおりUSB-Cが映像出力に対応しているので外付けモニターに接続することは可能ですが、そうすると1つだけのUSB-Cポートが潰れてなくなってしまうのが痛いです。
HDMIがないなら、USB-Cを2個、USB-Aは1個でOKという構成でも良かったかなと思います。
悪い: HDMIなし
バッテリー、排気音、熱など
バッテリー容量は51Whrという容量。
以下の条件でテストしてみました。
・画面の明るさをMAX
・wifi環境
・youtube動画を流しっ放し
結果は約7.0時間でした。
Pavilion Aero 13 | 5.5時間 |
Surface Pro 8 | 6.5時間 |
ThinkPad X1 Carbon | 7.0時間 |
ENVY x360 13 | 7.0時間 |
ZenBook 14 Ultralight | 8.0時間 |
バッテリーライフは優秀です。テストした条件は厳しめなので、普通にネットするだけとかであれば12時間くらいはもちそうです。
負荷時の音もとても静かで、作業に集中できるPCです。
評価まとめ
デザイン | ☆☆☆☆ |
キーボード・タッチパッド | ☆☆☆ |
ディスプレイ | ☆☆☆☆ |
性能、処理速度 | ☆☆☆☆ |
インターフェイス | ☆☆☆ |
バッテリー | ☆☆☆☆ |
コスパ | ☆☆☆☆ |
短所
・キー配列
・HDMI端子(映像出力用)なし
・1.25kgは微妙に重い
長所
・ボディの高級感
・明るいディスプレイ、色域も広い
・SSD容量が1TBある(Ryzen 7の場合)
・音が静か
良い点と悪い点、それぞれいくつかありますが、全体的には高い評価を付けたいPCです。
ボディの高級感やディスプレイの品質はとても良かったです。
また音が静かで作業に集中できるというのも大きいです。
キーボードのEnterキーが右端にない独特の配列はすでに何度も指摘されていることなので、すでに承知している人が多いかと思います。これはもう慣れるしかありません。
個人的はそれよりも1.25kgという重量がどうかなと思いました。
HPにはPavilion Aero 13という957gの軽量ノートもあります。
Pavilionとの比較が本機を買うかどうかの分かれ目になるかもしれません。
HP Pavilion Aero 13との比較
PavilionとENVY、両者の違いを表にまとめてみました。
Pavilion Aero 13-be | ENVY x360 13-ay | |
CPU | Ryzen 7 5800U | Ryzen 7 5800U |
SSD | 512GB | 1TB |
カラー | ホワイト、ピンク | ブラック |
ディスプレイ | 非光沢 | 光沢、タッチ |
縦横比 | 16:10 | 16:9 |
輝度 | 400nit | 400nit |
キーボード | 75点 | 75点 |
タッチパッド | 65点 | 75点 |
HDMI | あり | なし |
Webカメラ オフ | なし | あり |
バッテリー | 5.5時間 | 7.0時間 |
重量 | 957g | 1.25kg |
価格 | 12.3万 | 13.2万 |
Pavilionも実機をさわったことがあるのでENVYとの差がよくわかります。
全体の高級感ではENVYの方が上。
それがタッチパッドの操作性にも出ています。
あとENVYはSSDが1TBあります。これだけ容量があれば、画像や動画も管理できます。容量が足りなくて外付けのHDDやSSDを買う可能性が低くなることは良いことです。
Pavilionは圧倒的な軽さですね。
価格は約1万ほどPavilionが安いです。
どちらにするか迷うところですが、
・カラーはブラックがいい ⇒ ENVY
・タッチパネルがいい ⇒ ENVY
・16:10がいい ⇒ Pavilion
・軽い方がいい ⇒ Pavilion
という基準で選んだらいいと思います。
どちらも評価の高いマシンなので買って損するということはないでしょう。
ENVY派はこちら。
957gのPavilionもおすすめです。